【ふしぎな川柳 第六十六夜】角が匂う-樋口由紀子-
- 2016/01/28
- 08:00
三角形のどの角からも死が匂う 樋口由紀子
わが部屋のきれいな四角夏痩す 高柳克弘
【かどのふしぎ】
《角》ってふしぎなんですよね。都市伝説でも、部屋の四隅をみてから中央をみると幽霊がみえるとかあるけれど、角とか隅ってそういう呪術的ななにかを持っている。
で、なんで《角》ってマジカルなんだろうって考えたときに、これは推測なんだけれど、そもそもわたしたちの身体って《角》をもてないからなんじゃないかとおもうんですよ。直角みたいなものってわたしたちの身体にないわけですよね。無理につくればあるけれど、でもそれは《無理》を通すことになる。纏足みたいな抑圧になってしまうわけです、人体の角は。
けれど、その角に包囲されて暮らしている。しかも角って《ブレ》がないですよね。プラトンのイデアというか、もう直角は90度って絶対的に決まっているわけですから。だから《角》っていうのは到達すべき理念としてもある。
そのときにその角から「死」や「夏痩」という《身体の変化》が出てくるっておもしろいことだなあって思うんですよ。
「死」っていうのは身体が損なわれることだけれど、「痩せる」こともある意味で、〈ライトな死〉というか〈身体の減少〉に近いところがあるとおもうんですね。
そのとき「角」が意識されている。ぜったいてきにひとの身体が到達できない角と、到達できないからこそ変わらざるをえない身体が定型のなかに共存している。
これは、ふしぎなんじゃないかっておもうんですよ。
「角」とのふしぎなつきあいかたというものが短詩にはどうしたって、ある。
どうしても桜の下に来てほしい 樋口由紀子
グリーナウェイ『建築家の腹』(1988)。この映画はなにかというとおそらく、腹の○と建築物の〈角〉が葛藤しつづける映画なんですよ。ほんとうにただそれだけをこれでもかっていうくらいペダンティックに、いろんな知識を放り込んで、かつ、耽美に描いていく。でも図式としては、○と角はどう共存できるのか、できないのかって映画なんですよ。建築家のまるまるしたおなかと、まるまるとしたブーレの建築物と、でもそのまるい建築物からずれてゆく角張った〈なにか〉。この映画の冒頭で印象的なのが、国境をこえる列車のなかでセックスしているところから始まるんですが、それもある意味、○と列車や国境の角の対立なのかなって思うんですね。
わが部屋のきれいな四角夏痩す 高柳克弘
【かどのふしぎ】
《角》ってふしぎなんですよね。都市伝説でも、部屋の四隅をみてから中央をみると幽霊がみえるとかあるけれど、角とか隅ってそういう呪術的ななにかを持っている。
で、なんで《角》ってマジカルなんだろうって考えたときに、これは推測なんだけれど、そもそもわたしたちの身体って《角》をもてないからなんじゃないかとおもうんですよ。直角みたいなものってわたしたちの身体にないわけですよね。無理につくればあるけれど、でもそれは《無理》を通すことになる。纏足みたいな抑圧になってしまうわけです、人体の角は。
けれど、その角に包囲されて暮らしている。しかも角って《ブレ》がないですよね。プラトンのイデアというか、もう直角は90度って絶対的に決まっているわけですから。だから《角》っていうのは到達すべき理念としてもある。
そのときにその角から「死」や「夏痩」という《身体の変化》が出てくるっておもしろいことだなあって思うんですよ。
「死」っていうのは身体が損なわれることだけれど、「痩せる」こともある意味で、〈ライトな死〉というか〈身体の減少〉に近いところがあるとおもうんですね。
そのとき「角」が意識されている。ぜったいてきにひとの身体が到達できない角と、到達できないからこそ変わらざるをえない身体が定型のなかに共存している。
これは、ふしぎなんじゃないかっておもうんですよ。
「角」とのふしぎなつきあいかたというものが短詩にはどうしたって、ある。
どうしても桜の下に来てほしい 樋口由紀子
グリーナウェイ『建築家の腹』(1988)。この映画はなにかというとおそらく、腹の○と建築物の〈角〉が葛藤しつづける映画なんですよ。ほんとうにただそれだけをこれでもかっていうくらいペダンティックに、いろんな知識を放り込んで、かつ、耽美に描いていく。でも図式としては、○と角はどう共存できるのか、できないのかって映画なんですよ。建築家のまるまるしたおなかと、まるまるとしたブーレの建築物と、でもそのまるい建築物からずれてゆく角張った〈なにか〉。この映画の冒頭で印象的なのが、国境をこえる列車のなかでセックスしているところから始まるんですが、それもある意味、○と列車や国境の角の対立なのかなって思うんですね。
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