【感想】雨の日は、椎名林檎と珈琲とアフリカの本で神保町に いとうそらこ
- 2016/02/21
- 10:00
雨の日は、椎名林檎と珈琲とアフリカの本で神保町に いとうそらこ
【生の文法】
たしか加藤治郎さんの欄の毎日歌壇の一首からメモした短歌だと思うんですが、「椎名林檎と珈琲とアフリカの本」と「神保町」という組み合わせがすごくパワフルでおもしろいなと思いました。
つまりなんというでしょうか、すべての名詞のそれぞれが短歌一首にひとつくらいで十分な質量をもっている濃厚な名詞だと思うんですね。たったひとつ入ってくるだけで十分な量なのに、それが一気に短歌定型のなかでめいっぱい組み合わされ、重ねられる。それぞれの濃厚な名詞の濃度が「雨の日」によって怒濤のようになだれこんでくる。
でもこの組み合わせじゃないとダメなわけですよ。語り手がこれまで生きてきて長い時間をかけて他ならぬこの組み合わせに至ったんだということもいっしゅんにしてわかるわけです。ぱっと出る組み合わせではないですよね。「雨の日は、」と〈習慣〉の構文から入っているようにこの濃厚な名詞の組み合わせに語り手のこれまでの生の軌跡が入っている。それってすてきなことだなっておもうんです。
しかもちょっと「神保町」の〈神〉が神々しくもみえるんですよね。そのひとがそのひとだけのやりかたでつちかってきた〈生の技法〉がある。それっていっしゅんじゃたどりつかないものだから、なにかオーラを感じるんです。
名詞はその組み合わせによって濃厚なシーンをつくる。短い歌のなかで。
塾とドラッグストアと家族葬館が同じにおいの光を放つ 岡野大嗣
椎名林檎『幸福論』(1998)。今でもジョギングしながらきいているんですが(「月に負け犬」をよく聴いている)、椎名林檎の魅力って〈眼の濃度〉も重視したっていうこともあると思うんです。たとえば歌詞カードを読むと漢字でギチギチで〈読解〉を強要されるんだけれど、でも〈読解〉しなくても歌を聴くとすっと理解できる。そういう文学の深みに入らず文学の表面的なテクスチャーを〈眼の幸福感〉に変えていくのがすごくうまいひとだったんだと思うんです。PVとかもおもしろかったですよね。ナースコスプレでパンチでガラス割るのとか。店頭に立ってずっとみてた記憶があります。
【生の文法】
たしか加藤治郎さんの欄の毎日歌壇の一首からメモした短歌だと思うんですが、「椎名林檎と珈琲とアフリカの本」と「神保町」という組み合わせがすごくパワフルでおもしろいなと思いました。
つまりなんというでしょうか、すべての名詞のそれぞれが短歌一首にひとつくらいで十分な質量をもっている濃厚な名詞だと思うんですね。たったひとつ入ってくるだけで十分な量なのに、それが一気に短歌定型のなかでめいっぱい組み合わされ、重ねられる。それぞれの濃厚な名詞の濃度が「雨の日」によって怒濤のようになだれこんでくる。
でもこの組み合わせじゃないとダメなわけですよ。語り手がこれまで生きてきて長い時間をかけて他ならぬこの組み合わせに至ったんだということもいっしゅんにしてわかるわけです。ぱっと出る組み合わせではないですよね。「雨の日は、」と〈習慣〉の構文から入っているようにこの濃厚な名詞の組み合わせに語り手のこれまでの生の軌跡が入っている。それってすてきなことだなっておもうんです。
しかもちょっと「神保町」の〈神〉が神々しくもみえるんですよね。そのひとがそのひとだけのやりかたでつちかってきた〈生の技法〉がある。それっていっしゅんじゃたどりつかないものだから、なにかオーラを感じるんです。
名詞はその組み合わせによって濃厚なシーンをつくる。短い歌のなかで。
塾とドラッグストアと家族葬館が同じにおいの光を放つ 岡野大嗣
椎名林檎『幸福論』(1998)。今でもジョギングしながらきいているんですが(「月に負け犬」をよく聴いている)、椎名林檎の魅力って〈眼の濃度〉も重視したっていうこともあると思うんです。たとえば歌詞カードを読むと漢字でギチギチで〈読解〉を強要されるんだけれど、でも〈読解〉しなくても歌を聴くとすっと理解できる。そういう文学の深みに入らず文学の表面的なテクスチャーを〈眼の幸福感〉に変えていくのがすごくうまいひとだったんだと思うんです。PVとかもおもしろかったですよね。ナースコスプレでパンチでガラス割るのとか。店頭に立ってずっとみてた記憶があります。
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