【お知らせ】「【 短詩時評 十三形】久保田紺と吉田知子-わたしに手を合わせるおまえは誰だよ-」『BLOG俳句新空間 第37号』
- 2016/02/28
- 05:03
『 BLOG俳句新空間 第37号』にて「【短詩時評 十三形】久保田紺と吉田知子-わたしに手を合わせるおまえは誰だよ-」という文章を載せていただきました。『BLOG俳句新空間』編集部にお礼申し上げます。ありがとうございました!
お時間のあるときにお読みくだされば、さいわいです。
*
実は最初ですね、「久保田紺と江國香織」というタイトルで書いていたんですね。江國香織さんも、わたしとあなたの関係や家族の関係という〈かたち〉をずっといろいろこわしつつ、組み直しつつしてこられた表現者だと思ったので、その江國さんに久保田紺さんの川柳をかけあわせてみたかったんです。
たとえば江國香織さんのこんな詩があります。
病院という
白い四角いとうふみたいな場所で
あなたのいのちがすこしずつ削られていくあいだ
私はおとこの腕の中にいました
……
さよなら、
私も じきにいます。
いまじゃないけど。
江國香織「父に」『すみれの花の砂糖づけ』
ここにはどこにも行き着かない、かたちにならない〈関係〉がある。「おとこの腕の中」にいながらその「おとこ」のことを想うわけでもなく、でも父親の臨終のまぎわに父親のことを想っているわけでもない。そういうどこにも行き着かない関係です。
届くころには全く興味ありません 久保田紺
という紺さんの川柳があるんだけれど、まさしくこれなんじゃないかとおもう。思いが届いたしゅんかん、それはじぶんが抱いていた思いとはべつのものになってしまう。思いや隙間のなかでたえず思考しなければならない。
そういう《隙間の思考》を紺さんも江國さんも考えているのかなと。
言葉ってそうかんたんに届くものではないとおもうんですよ。でも届かないことばと沈黙は決定的にちがう。届かないことばは届かないかたちで相手に痕跡をきざんで、あるとき、時間をこえて届くばあいがあるんです。
それを《隙間の手紙》と呼んでみたいんです。みらいのきおくのためのてがみ、と。
大好きな隙間に誰か立っている 久保田紺
やかんをみていた
家というもののふしぎのなかで
父がいて 母がいた
穏やかで 日あたりがよく
幸福とよんでも かまわない
ただ
やかんをみていた
からっぽのからだで
家というもののふしぎのなかで
江國香織「やかん」『すみれの花の砂糖づけ』
お時間のあるときにお読みくだされば、さいわいです。
*
実は最初ですね、「久保田紺と江國香織」というタイトルで書いていたんですね。江國香織さんも、わたしとあなたの関係や家族の関係という〈かたち〉をずっといろいろこわしつつ、組み直しつつしてこられた表現者だと思ったので、その江國さんに久保田紺さんの川柳をかけあわせてみたかったんです。
たとえば江國香織さんのこんな詩があります。
病院という
白い四角いとうふみたいな場所で
あなたのいのちがすこしずつ削られていくあいだ
私はおとこの腕の中にいました
……
さよなら、
私も じきにいます。
いまじゃないけど。
江國香織「父に」『すみれの花の砂糖づけ』
ここにはどこにも行き着かない、かたちにならない〈関係〉がある。「おとこの腕の中」にいながらその「おとこ」のことを想うわけでもなく、でも父親の臨終のまぎわに父親のことを想っているわけでもない。そういうどこにも行き着かない関係です。
届くころには全く興味ありません 久保田紺
という紺さんの川柳があるんだけれど、まさしくこれなんじゃないかとおもう。思いが届いたしゅんかん、それはじぶんが抱いていた思いとはべつのものになってしまう。思いや隙間のなかでたえず思考しなければならない。
そういう《隙間の思考》を紺さんも江國さんも考えているのかなと。
言葉ってそうかんたんに届くものではないとおもうんですよ。でも届かないことばと沈黙は決定的にちがう。届かないことばは届かないかたちで相手に痕跡をきざんで、あるとき、時間をこえて届くばあいがあるんです。
それを《隙間の手紙》と呼んでみたいんです。みらいのきおくのためのてがみ、と。
大好きな隙間に誰か立っている 久保田紺
やかんをみていた
家というもののふしぎのなかで
父がいて 母がいた
穏やかで 日あたりがよく
幸福とよんでも かまわない
ただ
やかんをみていた
からっぽのからだで
家というもののふしぎのなかで
江國香織「やかん」『すみれの花の砂糖づけ』
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