【感想】まさか蛙になるとは尻尾なくなるとは 池田澄子
- 2016/03/06
- 09:36
まさか蛙になるとは尻尾なくなるとは 池田澄子
【失ってみよう、しっぽ】
池田さんの俳句のなかで、〈他人〉ってとても大事なコンセプトだとおもうんですよ。たとえば、
屠蘇散や夫は他人なので好き 池田澄子
という句は「はじめに他人ありき」の世界だと思うんです。でも「夫」を「他人」とおいたときには〈夫婦〉というユニットであるみずからも夫にとっての「他人」になるはずなんですよ。
で、考えてみると、「他人」からはじめる関係のネットワークって、じぶんが「他人」になることもおそれない関係性だと思うんですね。相手が「他人」だから突き放すんではなくて、「他人」だから関係がもてる世界。そのためにはたえず「じぶん」も「他人」化していかないといけない。
そのときに、この「蛙」の句って、〈じぶんが他人化していく〉驚きをもった「蛙」の句だと思うんです。
じぶんが「他人」となったときまずはおどろき・おののく。〈喪失〉に眼が向く。でもその〈おどろき〉としての〈他者性〉のようなものを想像力としてこれから関係する相手へと向けることで、「他人なので好き」という関係性が生まれるようにもおもうんです。夫も「尻尾なく」したひとだし、あのひとも「尻尾なく」したひと。でもそこに〈喪失のネットワーク〉がうまれる。
「夫」も「蛙」も他人化するけれど、たとえば「未来」も「むかし」におかれることで「他人化」して輝きだす。
芹の水むかしの未来きらきらと 池田澄子
ベントン『クレイマー、クレイマー』(1979)。夫婦にとって〈他人〉ってなんだろうっていう映画だとおもうんですよ。たとえば夫婦っていうユニットはだんだんとそれぞれの夫婦の生活形態や労働形態にもとづく〈分業形態〉ができあがってくるけれど、その〈分業形態〉が社会からおしつけられた恣意的な枠組みの場合もある(〈主婦〉だから〈妻〉だからこうすべきとかですね)。そういうとき、いったん「夫婦」というユニットを崩して「他人」という関係項を導入することによってもういちど〈ふたり〉を組立直すことができるんじゃないかともおもうんです。それは「好き」の再組織化でもいいんですけど。そうすると、「まさかこんなに好きだったとは尻尾なくなるとは」になる場合もある(んじゃないか)。その場合はもちろん『クレイマー、クレイマー』でダスティン・ホフマンがいろんなものを失ったように「尻尾」を失うひつようがある。
【失ってみよう、しっぽ】
池田さんの俳句のなかで、〈他人〉ってとても大事なコンセプトだとおもうんですよ。たとえば、
屠蘇散や夫は他人なので好き 池田澄子
という句は「はじめに他人ありき」の世界だと思うんです。でも「夫」を「他人」とおいたときには〈夫婦〉というユニットであるみずからも夫にとっての「他人」になるはずなんですよ。
で、考えてみると、「他人」からはじめる関係のネットワークって、じぶんが「他人」になることもおそれない関係性だと思うんですね。相手が「他人」だから突き放すんではなくて、「他人」だから関係がもてる世界。そのためにはたえず「じぶん」も「他人」化していかないといけない。
そのときに、この「蛙」の句って、〈じぶんが他人化していく〉驚きをもった「蛙」の句だと思うんです。
じぶんが「他人」となったときまずはおどろき・おののく。〈喪失〉に眼が向く。でもその〈おどろき〉としての〈他者性〉のようなものを想像力としてこれから関係する相手へと向けることで、「他人なので好き」という関係性が生まれるようにもおもうんです。夫も「尻尾なく」したひとだし、あのひとも「尻尾なく」したひと。でもそこに〈喪失のネットワーク〉がうまれる。
「夫」も「蛙」も他人化するけれど、たとえば「未来」も「むかし」におかれることで「他人化」して輝きだす。
芹の水むかしの未来きらきらと 池田澄子
ベントン『クレイマー、クレイマー』(1979)。夫婦にとって〈他人〉ってなんだろうっていう映画だとおもうんですよ。たとえば夫婦っていうユニットはだんだんとそれぞれの夫婦の生活形態や労働形態にもとづく〈分業形態〉ができあがってくるけれど、その〈分業形態〉が社会からおしつけられた恣意的な枠組みの場合もある(〈主婦〉だから〈妻〉だからこうすべきとかですね)。そういうとき、いったん「夫婦」というユニットを崩して「他人」という関係項を導入することによってもういちど〈ふたり〉を組立直すことができるんじゃないかともおもうんです。それは「好き」の再組織化でもいいんですけど。そうすると、「まさかこんなに好きだったとは尻尾なくなるとは」になる場合もある(んじゃないか)。その場合はもちろん『クレイマー、クレイマー』でダスティン・ホフマンがいろんなものを失ったように「尻尾」を失うひつようがある。
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