【短歌】会議中…(日経新聞・日経歌壇・穂村弘 選・2016年3月13日)
- 2016/03/13
- 18:04
会議中わたしはゆっくり立ち上がりゆめをみている(ご覧ください) 柳本々々
(日経新聞・日経歌壇・穂村弘 選・2016年3月13日)
【倒れるようにみる夢】
高橋順子さんの詩に、
倒れるように夢をみている
夢はひとの頬に
さみしい分別の跡を残した
高橋順子「夢」
というとても短い詩があるんですが、いつもこの「倒れるように夢をみている」状態がいいなとおもうんですね。
倒れる、ってことは、そのまま倒れきるとたぶん衝撃で覚醒してしまうんだろうということでもあるとおもうんです。
でもそのいっぽうで、倒れるその渦中のなかの速度のなかで、ふだんとはちがう感覚のなかに身をゆだねている。しかも「倒れるように」なので、その「ように」のぶんだけ時間の持続性がある。
でも、もしこの「ように」の倒れる直喩を語り手が信じ切れなくなったときは夢は覚醒してしまう。
そうすると、あとには、〈さみしい分別〉がやってくる。
そうすると、ゆめをみるっていうことは、〈無分別〉な行為のなかにダイヴしていくことなのかなっておもうわけです。
いきていたり、しんでいたりする、ゆらゆらするゆらぎのなかで、ひとは夢をみるために覚醒する。
あなたはゆらいでいる
あなたはしんだきりということはないのよ
わたしもよ
いきていたり しんでいたりするのよ
高橋順子「蜘蛛の糸」
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