【あとがき】片山杜秀『国の死に方』のあとがき
- 2016/03/25
- 07:09
2011年3月11日、関東で電車に乗っていた。…
それから一ヶ月くらいのあいだは、日本の国家と社会が比較的短期間で崩壊するのではないかという想念が脳裏を去らなかった。出版社もなくなる。大学もなくなる。原稿の依頼も授業もなくなる。その確率はけっこうあると考えた。終末を意識した。「遺言」のつもりで新聞や週刊誌や月刊誌に寄稿したり、放送で喋ったりしていた。
…中長期的未来における国家の破局の可能性を視野に入れずには済まない、ダラダラ続く「戦時」に突入している感覚があった。
…私は政治思想史の研究者という看板を出しているけれど、その一方でクラシック音楽の評論家もやっている。そちらの畑の人は私のこの種の書き物にはあんまり気付いてくれないものだ。が、吉田秀和さんは例外で、こちらからお送りしていたわけではないのに、なぜかいろいろ読んでくださっていた。こう言われた。「あなたは考えている。でもあなたの言っていることでは足りないんだ」。
足りないことをこの先、少しでも考えられればと思う。
片山杜秀「あとがき」『国の死に方』
それから一ヶ月くらいのあいだは、日本の国家と社会が比較的短期間で崩壊するのではないかという想念が脳裏を去らなかった。出版社もなくなる。大学もなくなる。原稿の依頼も授業もなくなる。その確率はけっこうあると考えた。終末を意識した。「遺言」のつもりで新聞や週刊誌や月刊誌に寄稿したり、放送で喋ったりしていた。
…中長期的未来における国家の破局の可能性を視野に入れずには済まない、ダラダラ続く「戦時」に突入している感覚があった。
…私は政治思想史の研究者という看板を出しているけれど、その一方でクラシック音楽の評論家もやっている。そちらの畑の人は私のこの種の書き物にはあんまり気付いてくれないものだ。が、吉田秀和さんは例外で、こちらからお送りしていたわけではないのに、なぜかいろいろ読んでくださっていた。こう言われた。「あなたは考えている。でもあなたの言っていることでは足りないんだ」。
足りないことをこの先、少しでも考えられればと思う。
片山杜秀「あとがき」『国の死に方』
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