【短歌】さっきから…(毎日新聞・毎日歌壇2016年3月28日・加藤治郎 特選)
- 2016/03/28
- 07:00
「さっきから苺の匂いがするんだけど」それが出会ったきっかけだった 柳本々々
(毎日新聞・毎日歌壇2016年3月28日・加藤治郎 特選)
【加藤治郎さんから頂いた選評】春である。思わずそう言ったとき、君は振り向いた。そんなシーンを想う。恋の始まりに苺はふさわしい。
【苺と巨人】
むかし、黙ってイチゴを持ち歩いていたことがあって、で、こっそり持ち歩いていたんですが、巨人みたいに大きなひとがそばにきたときに、「なんだかいちごのにおいがするな、いちごのにおいがするぞ」と言って、あたりをあちこちかぎまわりはじめたんですね。
それでわたしはまずいと思って、ものかげに隠れて持っていたいちごを次から次へと口にいれるんだけれども、巨人(みたいなひと)がだんだんこちらに近づいてきているのがわかる。こんなにわたしも持っていたんだというくらいあとからあとからイチゴがでてくる。わたしもじぶんでびっくりするくらい鞄にいちごをもっていたんですね。
それでそのときわたしはいちごを口いっぱいに頬張りながら、おとななのに泣きそうになりながら、窒息しかけて眼から☆なんかも噴きあげながら、リチャード・ブローティガンというひとがかつてつくったイチゴの俳句を思い出していたのです。ええと、
・・・・・
・・・・・・・
(十二個の)赤い実だ リチャード・ブローティガン
(毎日新聞・毎日歌壇2016年3月28日・加藤治郎 特選)
【加藤治郎さんから頂いた選評】春である。思わずそう言ったとき、君は振り向いた。そんなシーンを想う。恋の始まりに苺はふさわしい。
【苺と巨人】
むかし、黙ってイチゴを持ち歩いていたことがあって、で、こっそり持ち歩いていたんですが、巨人みたいに大きなひとがそばにきたときに、「なんだかいちごのにおいがするな、いちごのにおいがするぞ」と言って、あたりをあちこちかぎまわりはじめたんですね。
それでわたしはまずいと思って、ものかげに隠れて持っていたいちごを次から次へと口にいれるんだけれども、巨人(みたいなひと)がだんだんこちらに近づいてきているのがわかる。こんなにわたしも持っていたんだというくらいあとからあとからイチゴがでてくる。わたしもじぶんでびっくりするくらい鞄にいちごをもっていたんですね。
それでそのときわたしはいちごを口いっぱいに頬張りながら、おとななのに泣きそうになりながら、窒息しかけて眼から☆なんかも噴きあげながら、リチャード・ブローティガンというひとがかつてつくったイチゴの俳句を思い出していたのです。ええと、
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(十二個の)赤い実だ リチャード・ブローティガン
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