【希望の川柳 六日目】風葬の夏-飯島章友-
- 2016/05/29
- 22:40
過去問を解きつつ風葬だったこと 飯島章友
コンビニの冷蔵棚の奥の巨眼 〃
【ナイフはずっと落ちている】
飯島さんの『恐句』からの二句です。
飯島さんの川柳の〈恐さ〉って語り手が川柳のなかで川柳を語りつつ〈気づいてしまう〉ところにあるとおもうんですよ。
「風葬だったこと」に気づく。「奥の巨眼」に気づく。京極夏彦の大切なモチーフでもあると思うのだけれど、それまで〈知ってはいたけれど・気がつかなかったこと〉に〈気づいてしまうこと〉って恐ろしいことですよね。
それは自分がそれまで把持していたはずの構造が組み換えられてしまう未知の経験になってしまうから。
気がつくっていうことはどこかでは知っていたはずなんです。だから既知ではあった。でもじぶんの構造の外部にそれを置いていた。気がつかないようにして。ところがあるときひとはその外部がみずからの構造の核にあることに気がついてしまう。「巨眼」のように。
それってとても恐ろしいことなんじゃないかとおもうんです。
じゃあ、なにが今回は希望なのか。それでも希望はなんなのか。
〈気づき〉っていつも現在のことですよね。過去のことに今気がつく。だから過去問を解いている〈現在〉が大事になってくる。
語り手は気づくことをとおして同時にいまを生き、いまを言語化しようとしているんだとおもうんです。
そのとき、過去ははじめて〈風葬〉として背景へとおくられる。そしてこれからさらに〈風葬〉されるための今が現在形でやってくる。
そんなふうに、川柳は今を生きるためのツールになることがあるんじゃないかと思うんです。それは恐ろしいことでもあるけれど、きっと、希望あることでもあるんじゃないかと。
オニヤンマが干からびるほど待ちました 飯島章友
是枝裕和『歩いても 歩いても』(2008)。是枝監督の映画って〈今〉っていう時間がずっとさまよっているように思うんです。ここだって定められないというか。で、それってなんでかっていうと、是枝映画では出てくる人間たちのひとりひとりがそれぞれの時間をもっているからたとえ家族でもいっしょに生きられない、共通の時間をもつことができないっていうところにあるんだと思うんです。でもだからこそ、いっしょに生きるってどういうことなんだろうとずっとさがしていく。そういう時間〈と〉時間の間にある〈と〉の彷徨が是枝映画のひとつの静かなダイナミズムのようにもおもうんです。それはあるいてもあるいても。
コンビニの冷蔵棚の奥の巨眼 〃
【ナイフはずっと落ちている】
飯島さんの『恐句』からの二句です。
飯島さんの川柳の〈恐さ〉って語り手が川柳のなかで川柳を語りつつ〈気づいてしまう〉ところにあるとおもうんですよ。
「風葬だったこと」に気づく。「奥の巨眼」に気づく。京極夏彦の大切なモチーフでもあると思うのだけれど、それまで〈知ってはいたけれど・気がつかなかったこと〉に〈気づいてしまうこと〉って恐ろしいことですよね。
それは自分がそれまで把持していたはずの構造が組み換えられてしまう未知の経験になってしまうから。
気がつくっていうことはどこかでは知っていたはずなんです。だから既知ではあった。でもじぶんの構造の外部にそれを置いていた。気がつかないようにして。ところがあるときひとはその外部がみずからの構造の核にあることに気がついてしまう。「巨眼」のように。
それってとても恐ろしいことなんじゃないかとおもうんです。
じゃあ、なにが今回は希望なのか。それでも希望はなんなのか。
〈気づき〉っていつも現在のことですよね。過去のことに今気がつく。だから過去問を解いている〈現在〉が大事になってくる。
語り手は気づくことをとおして同時にいまを生き、いまを言語化しようとしているんだとおもうんです。
そのとき、過去ははじめて〈風葬〉として背景へとおくられる。そしてこれからさらに〈風葬〉されるための今が現在形でやってくる。
そんなふうに、川柳は今を生きるためのツールになることがあるんじゃないかと思うんです。それは恐ろしいことでもあるけれど、きっと、希望あることでもあるんじゃないかと。
オニヤンマが干からびるほど待ちました 飯島章友
是枝裕和『歩いても 歩いても』(2008)。是枝監督の映画って〈今〉っていう時間がずっとさまよっているように思うんです。ここだって定められないというか。で、それってなんでかっていうと、是枝映画では出てくる人間たちのひとりひとりがそれぞれの時間をもっているからたとえ家族でもいっしょに生きられない、共通の時間をもつことができないっていうところにあるんだと思うんです。でもだからこそ、いっしょに生きるってどういうことなんだろうとずっとさがしていく。そういう時間〈と〉時間の間にある〈と〉の彷徨が是枝映画のひとつの静かなダイナミズムのようにもおもうんです。それはあるいてもあるいても。
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