【短歌】「おはよう」の…(東京新聞・東京歌壇2016年6月5日・東直子 選)
- 2016/06/05
- 21:08
「おはよう」の意味がぬるっと溶けるくらい一緒に徹夜したんだった 柳本々々
(東京新聞・東京歌壇2016年6月5日・東直子 選)
【ぐったりの哲学】
徹夜をするとわたしはいつも〈ぐったり〉するんですが、〈無能力〉としてのひとの〈潜勢力〉を考察した『無能力批評』という本を書かれている杉田俊介さんが〈ぐったり〉をめぐってこんなふうに書かれているんです。
ただ、「ぐったり」に、少し違う感触が、ある。
そう、「ぐったり」は、元気や快癒が戻っても、人がつねに、送り返されるエレメントとして、たまたま、ある。
日常から刻々と強いられるもの。
それは、「ひとり」に、人を、する。
杉田俊介「無能ノート アガンベン、荒木飛呂彦、セン」『現代思想』2006・6
で、杉田さんのこの記述をみたときに、〈ぐったり〉や〈ぼんやり〉についてきちんといちど考えてみることって大事なんじゃないかと思ったんですよね。もちろん、〈ぐったり〉や〈ぼんやり〉は言語化や構造化を阻むものだと思うので、〈きちん〉を寄せ付けないとおもうんですね。でも、それでも、〈ぐったり〉や〈ぼんやり〉に思想的に哲学的になんとか近づいていくことはできないか。
ひとが〈ぐったり〉〈ぼんやり〉するときに、そこにはふだん理性的に考えている〈かたちでない〉思考があらわれるかもしれない。誰とも共有できない、思考でもない、思想でもない、言葉でもない、身体でもない、営為でもない、友愛でもない、〈ぐったり〉した〈ひとり〉のかたち。
そこになにかのひとの可能性があるんじゃないかなとも、おもうんです。よくはわかりません。ぼんやりしたまま書いています。このまま、寝てしまうかもしれません。
それでも〈ぐったり〉から始まる哲学ってなんだろうとときどきぼんやりしながら考えています。漱石の登場人物たちは、よく、大事な場面にぼんやりしています。ひとはここいちばんというときに、《ぼんやりを要請することがある》。なぜ、なんだろう。なにかが、そこには、《ぬるっと》回避されている。だれにも・わからない・かたちで。
遡上する鰻のように戻り来て東京駅の穴に飲まれる 東直子
(東京新聞・東京歌壇2016年6月5日・東直子 選)
【ぐったりの哲学】
徹夜をするとわたしはいつも〈ぐったり〉するんですが、〈無能力〉としてのひとの〈潜勢力〉を考察した『無能力批評』という本を書かれている杉田俊介さんが〈ぐったり〉をめぐってこんなふうに書かれているんです。
ただ、「ぐったり」に、少し違う感触が、ある。
そう、「ぐったり」は、元気や快癒が戻っても、人がつねに、送り返されるエレメントとして、たまたま、ある。
日常から刻々と強いられるもの。
それは、「ひとり」に、人を、する。
杉田俊介「無能ノート アガンベン、荒木飛呂彦、セン」『現代思想』2006・6
で、杉田さんのこの記述をみたときに、〈ぐったり〉や〈ぼんやり〉についてきちんといちど考えてみることって大事なんじゃないかと思ったんですよね。もちろん、〈ぐったり〉や〈ぼんやり〉は言語化や構造化を阻むものだと思うので、〈きちん〉を寄せ付けないとおもうんですね。でも、それでも、〈ぐったり〉や〈ぼんやり〉に思想的に哲学的になんとか近づいていくことはできないか。
ひとが〈ぐったり〉〈ぼんやり〉するときに、そこにはふだん理性的に考えている〈かたちでない〉思考があらわれるかもしれない。誰とも共有できない、思考でもない、思想でもない、言葉でもない、身体でもない、営為でもない、友愛でもない、〈ぐったり〉した〈ひとり〉のかたち。
そこになにかのひとの可能性があるんじゃないかなとも、おもうんです。よくはわかりません。ぼんやりしたまま書いています。このまま、寝てしまうかもしれません。
それでも〈ぐったり〉から始まる哲学ってなんだろうとときどきぼんやりしながら考えています。漱石の登場人物たちは、よく、大事な場面にぼんやりしています。ひとはここいちばんというときに、《ぼんやりを要請することがある》。なぜ、なんだろう。なにかが、そこには、《ぬるっと》回避されている。だれにも・わからない・かたちで。
遡上する鰻のように戻り来て東京駅の穴に飲まれる 東直子
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