【短歌】眼鏡って…/潜水プールの…(毎日新聞・毎日歌壇2016年6月14日・加藤治郎/米川千嘉子 選)
- 2016/06/14
- 13:32
一度位ぶちまけてみないと惨状が分からぬ給食のシチュー大鍋 村田一広
いつの間にか外されていた上向きに倒されている眼鏡を拾う 瀬戸さやか
(毎日新聞・毎日歌壇2016年6月14日・加藤治郎 選)
みどり、緑どこまでいっても新緑で少女がすらすら回す一輪車 水野真由美
(毎日新聞・毎日歌壇2016年6月14日・米川千嘉子 選)
【上向きに倒されている世界】
短歌のなかの主体っていうのはモノに宿っているんじゃないかと思うことがあって、たとえばきょうの毎日歌壇の歌ならば、「シチューの大鍋」や「上向きに倒されている眼鏡」や「すらすら回す一輪車」のほうに主体が刻まれているように思うんです。
で、たぶんなんだけれど、短歌に出てくるモノっていうのはそれは〈わたしたち〉という主体にどこか通底している。たぶん短歌定型にはそういう仕組みというか制度があって、だから、ぶちまけられた「シチュー大鍋」の惨状は〈わたしたち〉の惨状にもつながっていくし、「上向きに倒されている眼鏡」は上向きに倒される〈わたし(たち)〉にもつながっていく。「シチュー大鍋」や「倒されている眼鏡」から世界をはじめてそれまでとはちがったかたちで理解することができる。
実は世界のそこここに存在しているモノのひとつひとつ、加減のありかたや角度、壊れかたにわたしたちの加減や壊れかたが宿っている。それをみつけるひとつの〈しぐさ〉が短歌なのかなと思うことがあります。「みどり」「緑」「新緑」と少しずつ差異化されている世界も、「一輪車」というゆるやかな回転のグラデーションのなかで溶けていく。「一輪車」から考える世界とわたし。
眼鏡ってどこいったかなときいている草原だから此処は夢のなか 柳本々々
(毎日新聞・毎日歌壇2016年6月14日・加藤治郎 選)
潜水プールの底で考えた事。カレーライスやペテロの裏切り 柳本々々
(毎日新聞・毎日歌壇2016年6月14日・米川千嘉子 選)
いつの間にか外されていた上向きに倒されている眼鏡を拾う 瀬戸さやか
(毎日新聞・毎日歌壇2016年6月14日・加藤治郎 選)
みどり、緑どこまでいっても新緑で少女がすらすら回す一輪車 水野真由美
(毎日新聞・毎日歌壇2016年6月14日・米川千嘉子 選)
【上向きに倒されている世界】
短歌のなかの主体っていうのはモノに宿っているんじゃないかと思うことがあって、たとえばきょうの毎日歌壇の歌ならば、「シチューの大鍋」や「上向きに倒されている眼鏡」や「すらすら回す一輪車」のほうに主体が刻まれているように思うんです。
で、たぶんなんだけれど、短歌に出てくるモノっていうのはそれは〈わたしたち〉という主体にどこか通底している。たぶん短歌定型にはそういう仕組みというか制度があって、だから、ぶちまけられた「シチュー大鍋」の惨状は〈わたしたち〉の惨状にもつながっていくし、「上向きに倒されている眼鏡」は上向きに倒される〈わたし(たち)〉にもつながっていく。「シチュー大鍋」や「倒されている眼鏡」から世界をはじめてそれまでとはちがったかたちで理解することができる。
実は世界のそこここに存在しているモノのひとつひとつ、加減のありかたや角度、壊れかたにわたしたちの加減や壊れかたが宿っている。それをみつけるひとつの〈しぐさ〉が短歌なのかなと思うことがあります。「みどり」「緑」「新緑」と少しずつ差異化されている世界も、「一輪車」というゆるやかな回転のグラデーションのなかで溶けていく。「一輪車」から考える世界とわたし。
眼鏡ってどこいったかなときいている草原だから此処は夢のなか 柳本々々
(毎日新聞・毎日歌壇2016年6月14日・加藤治郎 選)
潜水プールの底で考えた事。カレーライスやペテロの裏切り 柳本々々
(毎日新聞・毎日歌壇2016年6月14日・米川千嘉子 選)
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