【短歌】体毛を…(毎日新聞・毎日歌壇2016年6月27日・米川千嘉子 特選)
- 2016/06/27
- 08:15
長芋を擦れば擦るほど眠くなりあんがい全部夢かもしれぬ 森下裕隆
とろとろと神社に闇は立ち込めてお面のままのぼくと兄さん 水野真由美
にゃあにゃあと鳴いているけど猫じゃない引っ掻いてくるけど猫じゃない 杜野郷四
【短歌と不穏】
きょうの毎日新聞・毎日歌壇の加藤治郎欄からの三首です。
「夢かもしれ」ない場所でどんどん擦られ増えていく〈とろろ〉、「お面」をはずさない「ぼくと兄さん」、「猫じゃない」なにか。
これら三首は〈不穏ななにか〉をめぐって組織化されているようにおもうんです。
短歌には〈不穏さ〉があるんじゃないかと思っていて、けっきょく〈言い当てられないなにか〉のぐるりをずっと周回しているのが短歌なんじゃないかと思うことがあるんです。
でもそれでも短歌はその〈不穏さ〉に〈不穏〉なままにカタチ=形式を与えることができる。定型によって。
だから、ときどき思うのは、定型っていうのは規則正しく音律を整えるものというよりは、不穏さを不穏のままに、曖昧さを曖昧なままにパッケージングする〈不穏の形式〉なんじゃないかと思うことがあるんです。だからすました形式ではなくて、もっとグロテスクにぬるぬるしているようなもの。もっとしわしわで、ふれるとうろこや銀粉がたくさん手に付着するような不快なもの。ウルトラマンの肌のような。
体毛をはじめて少し剃った夜ウルトラマンの銀色の肌 柳本々々
(毎日新聞・毎日歌壇2016年6月27日・米川千嘉子 特選)
【米川千嘉子さんから頂いた選評】思春期の回想か。銀色のすべすべのウルトラマンではなく、地上で苦しむ人間であることをぼんやり知ったのだ。
「銃後といふ不思議な町」を産んできたをんなのやうで帽子を被る 米川千嘉子
とろとろと神社に闇は立ち込めてお面のままのぼくと兄さん 水野真由美
にゃあにゃあと鳴いているけど猫じゃない引っ掻いてくるけど猫じゃない 杜野郷四
【短歌と不穏】
きょうの毎日新聞・毎日歌壇の加藤治郎欄からの三首です。
「夢かもしれ」ない場所でどんどん擦られ増えていく〈とろろ〉、「お面」をはずさない「ぼくと兄さん」、「猫じゃない」なにか。
これら三首は〈不穏ななにか〉をめぐって組織化されているようにおもうんです。
短歌には〈不穏さ〉があるんじゃないかと思っていて、けっきょく〈言い当てられないなにか〉のぐるりをずっと周回しているのが短歌なんじゃないかと思うことがあるんです。
でもそれでも短歌はその〈不穏さ〉に〈不穏〉なままにカタチ=形式を与えることができる。定型によって。
だから、ときどき思うのは、定型っていうのは規則正しく音律を整えるものというよりは、不穏さを不穏のままに、曖昧さを曖昧なままにパッケージングする〈不穏の形式〉なんじゃないかと思うことがあるんです。だからすました形式ではなくて、もっとグロテスクにぬるぬるしているようなもの。もっとしわしわで、ふれるとうろこや銀粉がたくさん手に付着するような不快なもの。ウルトラマンの肌のような。
体毛をはじめて少し剃った夜ウルトラマンの銀色の肌 柳本々々
(毎日新聞・毎日歌壇2016年6月27日・米川千嘉子 特選)
【米川千嘉子さんから頂いた選評】思春期の回想か。銀色のすべすべのウルトラマンではなく、地上で苦しむ人間であることをぼんやり知ったのだ。
「銃後といふ不思議な町」を産んできたをんなのやうで帽子を被る 米川千嘉子
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