【短歌】犬猿雉…/最後まで…(日経新聞・日経歌壇2016年7月24日 穂村弘 選/東京新聞・東京歌壇2016年7月24日 東直子 選)
- 2016/07/25
- 23:33
日本はアニメ、ゲームとパソコンと、あとの少しが平山郁夫 黒瀬珂瀾
【日本と理解の2・5次元】
さいきんずっと2・5次元ってなんだろうって考えていて、そのときふっと思い出したのが黒瀬さんの上の歌だったんです。
この歌の「平山郁夫」という絵画の記号を〈二次元〉の記号とすると、それによって「アニメ、ゲームとパソコン」という記号が差異化されて〈二・五次元〉として湧いてくる。日本っていうのはほんの「少し」だけ〈二次元〉なんだけれど、でもそのほとんどは〈二・五次元〉でできている。勝手な解釈なんだけれども、今読んでみるとちょっとそんなふうにおもったんです。
さいきん、ポケモンGOが流行っていますが、ちょっとびっくりしたのは、ゲームってもう〈果て〉がないんだなっていうことです。世界の物量としての土地そのものがゲームのフィールドとして2・5次元化してしまった。〈果て〉がないのはちょっとした地獄だなっておもって。なんというか、中澤系さんの〈理解できないひとはさがって〉の世界というか、〈理解〉できるひとは果てのない世界をどんどんつきすすんでいくしかない。接続過剰を切断しないと、さがるチャンスがない世界。
3番線快速電車が通過します理解できない人は下がって 中澤系
でもよく考えてみると、それって今にはじまったことじゃなくて、たとえば明治40年あたりに地図がさかんに製作されはじめるんだけど(そこには国の外部への領土拡大と国民国家として共同体を統一化する想像力がめぐっていて啄木の地図を塗りつぶす歌もその延長にあると思うんだけれど)、そういう〈地図〉によって想像な日本がたちあげられていたのも実は2・5次元だったのではないかと思うんです。
乱暴にいえば、三次元領域がこの世界にあるのかどうか。三次元がラカンのいう意味での現実界ならば、三次元に触れることさえじつはできないのではないか。黒瀬さんの歌に〈三次元領域〉がなかったように。
ちょっとそんなことを思ったんです。日本や理解の次元ってどこらへんにあるんだろうと。
犬猿雉という風景だったのに防護服を着て何をしてるの 柳本々々
(日経新聞・日経歌壇2016年7月24日 穂村弘 選)
最後までハ行で通したお別れの言葉は風の即興で、いい 柳本々々
(東京新聞・東京歌壇2016年7月24日 東直子 選)
【日本と理解の2・5次元】
さいきんずっと2・5次元ってなんだろうって考えていて、そのときふっと思い出したのが黒瀬さんの上の歌だったんです。
この歌の「平山郁夫」という絵画の記号を〈二次元〉の記号とすると、それによって「アニメ、ゲームとパソコン」という記号が差異化されて〈二・五次元〉として湧いてくる。日本っていうのはほんの「少し」だけ〈二次元〉なんだけれど、でもそのほとんどは〈二・五次元〉でできている。勝手な解釈なんだけれども、今読んでみるとちょっとそんなふうにおもったんです。
さいきん、ポケモンGOが流行っていますが、ちょっとびっくりしたのは、ゲームってもう〈果て〉がないんだなっていうことです。世界の物量としての土地そのものがゲームのフィールドとして2・5次元化してしまった。〈果て〉がないのはちょっとした地獄だなっておもって。なんというか、中澤系さんの〈理解できないひとはさがって〉の世界というか、〈理解〉できるひとは果てのない世界をどんどんつきすすんでいくしかない。接続過剰を切断しないと、さがるチャンスがない世界。
3番線快速電車が通過します理解できない人は下がって 中澤系
でもよく考えてみると、それって今にはじまったことじゃなくて、たとえば明治40年あたりに地図がさかんに製作されはじめるんだけど(そこには国の外部への領土拡大と国民国家として共同体を統一化する想像力がめぐっていて啄木の地図を塗りつぶす歌もその延長にあると思うんだけれど)、そういう〈地図〉によって想像な日本がたちあげられていたのも実は2・5次元だったのではないかと思うんです。
乱暴にいえば、三次元領域がこの世界にあるのかどうか。三次元がラカンのいう意味での現実界ならば、三次元に触れることさえじつはできないのではないか。黒瀬さんの歌に〈三次元領域〉がなかったように。
ちょっとそんなことを思ったんです。日本や理解の次元ってどこらへんにあるんだろうと。
犬猿雉という風景だったのに防護服を着て何をしてるの 柳本々々
(日経新聞・日経歌壇2016年7月24日 穂村弘 選)
最後までハ行で通したお別れの言葉は風の即興で、いい 柳本々々
(東京新聞・東京歌壇2016年7月24日 東直子 選)
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