【短歌連作】「おまえって、猫だね」『かばん』2016年6月号
- 2016/07/30
- 05:54
【詞書】美しき夜たれ猫の鈴外す 松岡瑞枝
吾輩にキラキラネームをつけてやる 流星(きらら)、火星(まあず)、光音(らら)、翠輝(さふぁいあ)、猫姫(きてぃ)
帰宅したきみは面(おもて)をりんとあげ階段をのぼる ふりふりがない
猫的なこころをわたしにくださいなそしたらわたしはあなたをさ/わ(す)れる
猫だけが入れる扉のからんころんこの世ですこしかみさまに流行る
ぬるぬるのシュレディンガーの猫たちが理論上では部屋に満杯
桃色の鼻こすりあいねむってるぜったいてきなまるのおうこく
肉球がぽつんぽつんと落ちているわたしはあなたとけっこんをした
なうなうとあそこで猫が鳴いているわたしの猫はまうまうと鳴く
柳本々々「おまえって、猫だね」『かばん』2016年6月
*
【添え書き】
最近、家の猫がふくろうに似てきてしまってどうしようと思う。本人もわかってきているのか、ふくろうのように顔を体に押し込めたり、小首を大きく傾げている。大抵は驚いた顔をしていて、餌をあげる時も、どうして今回はかつおぶしがかかっていないのかとおののいた顔をしている。撫でると、口をあけたまま、あーーーという感じになって、少しだけ、その時だけは、猫になる。
*
新井蜜さん、百々橘さん、森本乃梨子さんから歌評をいただきました。ありがとうございました。
大木がうかがふことだその者をやりきれなくてしやがみこませる 新井蜜
矢のように過ぎてく中で矢の上に立つイメージを私はしよう 百々橘
カラ松にカラ松の風邪おそ松におそ松の風邪さびしかりけり 森本乃梨子
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