【短歌】いやきみは、…(東京新聞・東京歌壇・東直子 選・2016年8月28日)
- 2016/08/29
- 20:07
いやきみは、思い出の場所なんてもうどうでもいいの歩き方だそれは 柳本々々
(東京新聞・東京歌壇・東直子 選・2016年8月28日)
【希望も絶望もないちょっと】
こないだある方と話していて、作家のディネーセンが言った「わたしは希望も絶望もなく毎日ちょっとずつ書きます」という言葉の話になったんです。
で、なんで、「希望も絶望もなく」なんだろうってそのとき考えたんですが、それはたぶん、明日っていう時間はまだ希望も絶望ももってないからだと思うんですよね。だからこそ、毎日、ちょっとずつ続けることができる。毎日っていうのは今までの時間だけでなく、今からつながっていく明日への時間もふくんでいるから。
そして明日への時間もきょうはすでにふくんでいるからこその「ちょっと」なんじゃないかと思うんです。その不足したぶんで明日につながる、というか。
わかんない。ディネーセンがそれを聞いたら、おいおまえぜんぜん違うよ、そうじゃないよ、って言うかもしれないけれど。
でもそう言われてもよいんじゃないかなとも私はおもうんです。理解もまたちょっとずつ、する。ちょっとずつ理解したり、ちょっとずつうまくいったり、ちょっとずる失敗したりする。
そうしたら、それでもいいよ、ってディネーセンは言ってくれるんじゃないか。
船に乗るつもりで海にきて、いつまでも浜辺で暮らしている。そんな毎日だな、とふと思う。 東直子『十階 短歌日記』
(東京新聞・東京歌壇・東直子 選・2016年8月28日)
【希望も絶望もないちょっと】
こないだある方と話していて、作家のディネーセンが言った「わたしは希望も絶望もなく毎日ちょっとずつ書きます」という言葉の話になったんです。
で、なんで、「希望も絶望もなく」なんだろうってそのとき考えたんですが、それはたぶん、明日っていう時間はまだ希望も絶望ももってないからだと思うんですよね。だからこそ、毎日、ちょっとずつ続けることができる。毎日っていうのは今までの時間だけでなく、今からつながっていく明日への時間もふくんでいるから。
そして明日への時間もきょうはすでにふくんでいるからこその「ちょっと」なんじゃないかと思うんです。その不足したぶんで明日につながる、というか。
わかんない。ディネーセンがそれを聞いたら、おいおまえぜんぜん違うよ、そうじゃないよ、って言うかもしれないけれど。
でもそう言われてもよいんじゃないかなとも私はおもうんです。理解もまたちょっとずつ、する。ちょっとずつ理解したり、ちょっとずつうまくいったり、ちょっとずる失敗したりする。
そうしたら、それでもいいよ、ってディネーセンは言ってくれるんじゃないか。
船に乗るつもりで海にきて、いつまでも浜辺で暮らしている。そんな毎日だな、とふと思う。 東直子『十階 短歌日記』
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