【短歌】あたしたち…(「第102回 短歌ください(お題:ゴミ)穂村弘 選」『ダ・ヴィンチ』2016年10月号)
- 2016/09/06
- 22:05
膝に鞄をのせて知らせを待っているあなた方みな選別される 加藤治郎
【就活の詩力】
就活の面接の歌っていうといつもこの加藤さんの歌を思い出すんですね。
わたしはそういう入社面接の「選ばれる」身にも「選ぶ」身にもなったことがあるんですが、けっきょく実はそれって紙一重で、選ばれるも選ぶもそんなに変わらないところがあるんじゃないかって思うんです。選ぶときに選ばれているし、選ばれるときに選んでもいるんだと。
たとえば加藤さんの歌も「あなた方みな選別される」という〈まなざし〉そのものがつねに読み手によって〈選別〉されている。〈選ぶ〉っていう行為そのものはつねに誰かによって〈選別される〉。
この加藤さんの歌が〈選ぶ〉歌でありながら言葉に重力があるのって、〈選別〉という〈選ぶ〉ということは〈別れることである〉っていうことを意識しながらも、その〈別れるひと〉たちの〈重たさ〉もまた描いているところにあるんじゃないかと思うんです。「膝に鞄をのせて知らせを待っている」と、そのひとたちをめぐる重力の磁場を〈想像〉している。
でもその〈想像〉も、その〈想像〉とはまったく無関係に「選」んで「別」れなければならない。入社面接ってたぶんそういうことなんですよね。想像力をたちあげたしゅんかんそれが行き場もなく吹き溜まってしまう空間。
あたしたちゴミなんですかと面接の会場ぜんぶに響き渡る声 柳本々々
(「第101回 短歌ください(お題:ゴミ)穂村弘 選」『ダ・ヴィンチ』2016年10月号)
【就活の詩力】
就活の面接の歌っていうといつもこの加藤さんの歌を思い出すんですね。
わたしはそういう入社面接の「選ばれる」身にも「選ぶ」身にもなったことがあるんですが、けっきょく実はそれって紙一重で、選ばれるも選ぶもそんなに変わらないところがあるんじゃないかって思うんです。選ぶときに選ばれているし、選ばれるときに選んでもいるんだと。
たとえば加藤さんの歌も「あなた方みな選別される」という〈まなざし〉そのものがつねに読み手によって〈選別〉されている。〈選ぶ〉っていう行為そのものはつねに誰かによって〈選別される〉。
この加藤さんの歌が〈選ぶ〉歌でありながら言葉に重力があるのって、〈選別〉という〈選ぶ〉ということは〈別れることである〉っていうことを意識しながらも、その〈別れるひと〉たちの〈重たさ〉もまた描いているところにあるんじゃないかと思うんです。「膝に鞄をのせて知らせを待っている」と、そのひとたちをめぐる重力の磁場を〈想像〉している。
でもその〈想像〉も、その〈想像〉とはまったく無関係に「選」んで「別」れなければならない。入社面接ってたぶんそういうことなんですよね。想像力をたちあげたしゅんかんそれが行き場もなく吹き溜まってしまう空間。
あたしたちゴミなんですかと面接の会場ぜんぶに響き渡る声 柳本々々
(「第101回 短歌ください(お題:ゴミ)穂村弘 選」『ダ・ヴィンチ』2016年10月号)
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