【あとがき】佐々木敦『ニッポンの音楽』のあとがき
- 2016/09/21
- 12:55
本書は世に送り出されたその瞬間から古くなってゆくことになるだろう。だが、結局のところ「歴史」とは、そういうものではないのか。今はいつでも今だし、だが今はすぐさまさっきに、かってになってゆく。それを免れるには、今を忘れること、忘れたふりをすること、見て見ぬふりをすること、つまり今を見捨てるしかない。だがわたしには、それはできなかったし、したくもなかった。「はじめに」でも述べておいたように、わたしにとって「歴史」とは、今とこれからを考えるためにこそある。『ニッポンの音楽』は、やはりこれも『ニッポンの思想』と同じように、あるひとつ(ながり)の「物語=歴史」が今や終わりつつあり、ではこの後はいったいどうなるのか、と問いかける手前で途切れている。その途絶こそが「現在」なのだ。この問いへの答えは、本書の後にやってくるだろう、新たな「物語」の主人公たちが、それぞれの仕方で教えてくれる筈である。わたしは、それを期待しているし、信じていると言ってもよい。
佐々木敦「あとがき」『ニッポンの音楽』
佐々木敦「あとがき」『ニッポンの音楽』
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