【川柳連作】「さわやかなひらてうち」(「触光の作家」『触光』2016年10月)
- 2016/10/06
- 07:13
こうするとぶらさげられる春ですよ
ひゃっとする花束の背中さわると
死ぬときにキリンは鯖の夢をみる
お祈りのかたちのままでバスに乗る
浴室に江國香織が直立す
さわやかなひらてうち、朝 うわーいいね
○のような素のようなガチガチのような
トイレあけるとがぜん犀でした
最後まで寄り添ったのは叱るため
柳本々々「さわやかなひらてうち」(「触光の作家」『触光』2016年10月)
「たてがみを失ってからまた逢おう/小池正博」、「お別れに光の缶詰を開ける/松岡瑞枝」。私はこの二句から現代川柳に入った。私がこの二句につかまえられたのは、どちらも〈さようなら〉の形が詩の光として昇華されているところにある。この二句はこう言っている。「さようならからはじめなさい」と。だからそこから私は川柳を始めようと思った。さようならの言葉からなら、歩み出せると思ったから。
最後から、すべてがわかった地点からそれでも〈わからない〉未来に出発するのが現代川柳の詩の力ではないか。私は今でもそう思う。
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