【あとがき】酒井直樹『死産される日本語・日本人』のあとがき
- 2016/10/10
- 07:39
さまざまな偶然から、ひとは予期しない状況に投げ込まれる。そのような状況で、いかにして歴史的な問いを提示すべきかを考えざるをえない機会が、私には多くあった。歴史的な問いは、社会的現実をその表象の仕方を組み替えることによって変更する分節化につながり、本書に収められた論文は、そのような分節化の試みの軌跡であるといえるかもしれない。人びとが一定の社会的な立場を占めるとき感じる不安や疑問でいまだに規定されていないものを、概念化し政治的な抗争にかかわるものとして位置付けること、と、分節化をとりあえず定義しておこう。すると、私のかかわった分節化の効果によってその主体的立場に変化を被って欲しい人びとは、私自身を含めて、日本在住の人びとの範囲を越えている。だから、日本に住んでいる人びとという意味での在日の人びとを越えて、また、日本国民に帰属しているという意識をもつ人びととしての「日本人」の集団を越えたところで、これらの論文は発想されざるをえなかったのである。
酒井直樹「あとがき」『死産される日本語・日本人』
酒井直樹「あとがき」『死産される日本語・日本人』
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