【短歌連作】「春の蠅」『かばん』2017年3月号
- 2017/03/13
- 18:10
「指をくわえて」だなんて言うひとだったかな春の蠅が飛ぶ
この味は理解したからもういいと言ったわたしを残念におもう
なにもかもきちんとかなえてあげるから雲が私に私が雲に
父のメールはコオロギのコが抜けていてオロギのままで送られてくる
カーテンが揺れているのはあいている窓のせいだろう父にも妬み
ああこれはわかっていたがちょっと今忙しいからはふられることば
工場労働に向かうバスのなかこりゃいけねえやとひざがふるえる
平成が終わるんだろうかオムライス雲丹ポップコーン薇薯蕷
柳本々々「春の蠅」『かばん』2017年3月号
*
【添え書きの園】
陰鬱な顔で終わりの話ばかりしてくるので、あなたもしかして死ぬ事を考えてるんじゃないですよね、もしそうなら今から急いで全力で説得しないといけないから、と言うと、あなたもそんなに生きる力ないでしょう、と言うので途端に落ち込んで、そういえばそうだったと下を向く。《そういえばそうだった》
*
ですよねえなんですねえの言葉遣いお互いさまを中腰でする 柳本々々
(かばん新春題詠「お互い様」)
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