【短歌連作】「桜桃忌に凄まれる」『かばん』2017年6月
- 2017/10/20
- 07:53
駅員にゆっくり少しずつ話すいっぱい穴のあいた窓口で
ありふれた言葉に胸が感応し感応しすぎてまいったなこれは
雨の日の電車やさしく思い出す水族館で凄まれたこと
たったひとりで足がしびれてじっとしているがあなたは元気だろうな
鉄道に耳を押し当てた青春の話をきいたがまんしながら
喧嘩するわれわれの間をクラムボンがかぷかぷ流れて、あのなと続く
「桜桃忌」「あそっかきょうか」とぼくも言う。ほとんどぜんぶ忘れてしまう
Tシャツを着せるとわらうしてわらうほとんどわらっていたんじゃないか
柳本々々「桜桃忌に凄まれる」『かばん』2017年6月
【添え書きの園】
よく石原ユキオさんの「桜桃忌知らない人と手をつなぐ」という句を思い出すのだが、この「知らない人」という到達不可能な対象に「手をつなぐ」ことで近接してしまうということはどういうことなんだろうということを考える。到達しがたさにしがたいままで近接してしまうこと。太宰の死んだ日に。
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