【短歌連作】「きょうごめん行けないんだ」『かばん』400号、2017年7月号
- 2017/10/20
- 21:22
詩と愛と光と風と暴力ときょうごめん行けないんだの世界
働けど働けど別に手も見ないパンのレーズンじっとみつめる
『サザエさん』の時間に少し愛し合うとっても不思議な日曜だった
すきなひとのすきなひとのはなしをきいている そのすきなひとにもすきなひとがいる
口喧嘩しているときの彗星のなんでもないたたずまいがよかった
ヴーーンと冷蔵庫の鳴るタイミング歩き方変よと言われた夜も
にゃにゃあにゃあにゃあにゃあにゃにゃあ【訳:君は私をそっと抱き上げるべき】
星ひろう。なんでもひろわないでねときみにいわれる。「はい」とこたえる。
柳本々々「きょうごめん行けないんだ」『かばん』400号、2017年7月号
*
詩と愛と光と風と暴力ときょうごめん行けないんだの世界 柳本々々
もしかしたら表現というのは「墓」をつくる行為なのかもしれないと時々おもったりする。表現するにんげんは最終的に表現の墓場にたどり着くのではないか。ものをつくるということはときに暴力性を帯びながらそれでも未来の光(ヒカリ/ハカ)をさがす行為なのではないか。わたしとあなたがいたこと。わたしと詩と光と風と暴力とあなたと生きられた墓があったこと。「欲張りすぎじゃない? 愛も忘れてるし」とあなたが言う。「なんでも入るかばんだって言うから。でも、そう言うなら」 じゃあ、これだけに。わたしたちがいたこと。
「500号に向けてのタイムカプセル」
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【添え書きの園】
安福望と電車に乗っていた時に、あそこ座っていいですよとぼそぼそ言ったら、あそこ座れ!と聞こえたらしく安福望がおびえながら空いている席に座る。私はぼんやりしながら外をみていたがどさどさ人が降りて安福望の周りを屈強な男達が取り囲むように座る。山帰りらしい。男達は安福望に「山帰りですか?」と言い安福望はおびえた感じで「違います」と言う。次は東京、とアナウンスの声。
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