【感想】忘れられた傘たちの共通点 二村鉄子
- 2014/08/03
- 05:50
忘れられた傘たちの共通点 二村鉄子
【傷ついてみよう。思い出してみよう。わすれることを】
さいきん、ときどき、ふっとおもうのが、定型っていうのは肉体なのではないかということです。
肉体であるということは、傷つくということであり、傷つくということは、傷ついてなお起ち上げたい〈なにか〉がそこにでてくるということです。
定型をあえていま身体といわなかったのは、もっと受肉化させて傷つけるための方便です。
で、ですね。
上の二村さんの句はすごく傷ついているとおもうんですね。
わすれられ/たかさたちのきょ/うつうてん
定型としては満身創痍のようにも、おもいます。
定型っていうのは、音律をリズムよく刻み込むことで記憶させる装置になっているのですが、これではおそらくほとんど記憶できません。なぜなら、定型が傷つき、ずれているからです。
つまり、驚くべきことだとおもうのですが、この句は、「忘れられた傘たちの共通点」を読み手に記憶させないように周到に構造化されている句なのではないかとおもうのです。
そしてひるがえってかんがえれば、だからこそわたしたちは、これからも傘をわすれつづけるのです。共通点を定型上、みいだせず、記憶することもできなかったから。
だからわたしはこんなふうにおもうのです。
定型とは、記憶の肉体であり、それが満身創痍のときは、わたしたちは、記憶の媒介なしに忘却とあらためてむきあうのだ、と。
しかしそのとき、わたしたちが記憶としての保身をとれないかたちで、どこにも回避も逃避もあとまわしも保留もいいわけもできないかたちで、受肉化された定型と、受肉化された忘却と、受肉化されたいままで忘れられたすべての傘にであうのだと。
定型とは、〈気がする〉ことです。いや、〈気がする〉ことをつづけることです。いや、〈気がする〉ことをつづけることを、ときどきつづけないことです。だから、定型も、傘も、
全部拾ったもののような気がする 二村鉄子
【傷ついてみよう。思い出してみよう。わすれることを】
さいきん、ときどき、ふっとおもうのが、定型っていうのは肉体なのではないかということです。
肉体であるということは、傷つくということであり、傷つくということは、傷ついてなお起ち上げたい〈なにか〉がそこにでてくるということです。
定型をあえていま身体といわなかったのは、もっと受肉化させて傷つけるための方便です。
で、ですね。
上の二村さんの句はすごく傷ついているとおもうんですね。
わすれられ/たかさたちのきょ/うつうてん
定型としては満身創痍のようにも、おもいます。
定型っていうのは、音律をリズムよく刻み込むことで記憶させる装置になっているのですが、これではおそらくほとんど記憶できません。なぜなら、定型が傷つき、ずれているからです。
つまり、驚くべきことだとおもうのですが、この句は、「忘れられた傘たちの共通点」を読み手に記憶させないように周到に構造化されている句なのではないかとおもうのです。
そしてひるがえってかんがえれば、だからこそわたしたちは、これからも傘をわすれつづけるのです。共通点を定型上、みいだせず、記憶することもできなかったから。
だからわたしはこんなふうにおもうのです。
定型とは、記憶の肉体であり、それが満身創痍のときは、わたしたちは、記憶の媒介なしに忘却とあらためてむきあうのだ、と。
しかしそのとき、わたしたちが記憶としての保身をとれないかたちで、どこにも回避も逃避もあとまわしも保留もいいわけもできないかたちで、受肉化された定型と、受肉化された忘却と、受肉化されたいままで忘れられたすべての傘にであうのだと。
定型とは、〈気がする〉ことです。いや、〈気がする〉ことをつづけることです。いや、〈気がする〉ことをつづけることを、ときどきつづけないことです。だから、定型も、傘も、
全部拾ったもののような気がする 二村鉄子
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