【感想】ほんとうに来ちゃったのかよどうしよう 丸山進
- 2014/08/04
- 22:26
ほんとうに来ちゃったのかよどうしよう 丸山進
【凄く整然とした〈マ、マヂっすか!?〉】
これはわたしが考えていることにすぎないんですが、基本的に語り手の〈ゆれ〉は定型の〈ゆれ〉として表されるべきであり、ソフトウェアとしての内容面での〈ゆれ〉としては短詩型においては表しえないんじゃないか、むしろソフトウェアがゆれていても、でもそこからこれは短詩型なんだ、注意深くならなければ、という意識をもってもいいんじゃないかとおもうんです。
で、この丸山さんの句なんですが、大いにゆれています。上五の「ほんとうに」からは、語り手が「ほんとう」は相手が来なかったと思っていたことがわかるし、中七の「来ちゃったのかよ」という砕けたいいかたからも言語の構えができないままの切迫した様子もうかがえます。さらに下五において「どうしよう」とまったく句の事態をおさめようとしない状況を丸投げしてしまう語り手と、まさに完璧な〈動揺〉の句です。
でもこの句のおもしろさは、そうしたパーフェクトな動揺を描いていると同時に、きっちり定型におさめている語り手のおもしろさがあるのではないかとおもうんです。
そのギャップにわたしはこの句のゆれる/ゆれないダイナミズムをみます。
語り手は言語的に動揺しながらも、決して定型上は動揺していないし、ゆれてもいない。きっちりと川柳定型のスタンスを確保しています。
つまり、定型の面からみるならば、わたしはこの句の語り手は〈動揺〉していないとみます。
ソフトな面では〈困惑〉しつつも、ハードな面で〈嬉しがっ〉てしまっている構造の句なのではないかとおもうのです。それがこの句のひとすじなわではいかないしたたかさなのではないかと。
わたしはこんなふうに、定型とはときに語り手の意識的無意識としても機能するとおもうのです。定型は、575という音数律がある時点で〈意識的〉です。しかしソフトウェアの深層につねに構造的にはおかれる点で〈無意識〉です。ですから、定型とは〈意識的無意識〉であり、その〈意識的無意識〉のダイナミズムがこの丸山さんの句の醍醐味なんだとわたしはおもっているのです。でも──まちがっちゃってたら、どうしよう。
簡潔で韻も踏んでる置手紙 丸山進
【凄く整然とした〈マ、マヂっすか!?〉】
これはわたしが考えていることにすぎないんですが、基本的に語り手の〈ゆれ〉は定型の〈ゆれ〉として表されるべきであり、ソフトウェアとしての内容面での〈ゆれ〉としては短詩型においては表しえないんじゃないか、むしろソフトウェアがゆれていても、でもそこからこれは短詩型なんだ、注意深くならなければ、という意識をもってもいいんじゃないかとおもうんです。
で、この丸山さんの句なんですが、大いにゆれています。上五の「ほんとうに」からは、語り手が「ほんとう」は相手が来なかったと思っていたことがわかるし、中七の「来ちゃったのかよ」という砕けたいいかたからも言語の構えができないままの切迫した様子もうかがえます。さらに下五において「どうしよう」とまったく句の事態をおさめようとしない状況を丸投げしてしまう語り手と、まさに完璧な〈動揺〉の句です。
でもこの句のおもしろさは、そうしたパーフェクトな動揺を描いていると同時に、きっちり定型におさめている語り手のおもしろさがあるのではないかとおもうんです。
そのギャップにわたしはこの句のゆれる/ゆれないダイナミズムをみます。
語り手は言語的に動揺しながらも、決して定型上は動揺していないし、ゆれてもいない。きっちりと川柳定型のスタンスを確保しています。
つまり、定型の面からみるならば、わたしはこの句の語り手は〈動揺〉していないとみます。
ソフトな面では〈困惑〉しつつも、ハードな面で〈嬉しがっ〉てしまっている構造の句なのではないかとおもうのです。それがこの句のひとすじなわではいかないしたたかさなのではないかと。
わたしはこんなふうに、定型とはときに語り手の意識的無意識としても機能するとおもうのです。定型は、575という音数律がある時点で〈意識的〉です。しかしソフトウェアの深層につねに構造的にはおかれる点で〈無意識〉です。ですから、定型とは〈意識的無意識〉であり、その〈意識的無意識〉のダイナミズムがこの丸山さんの句の醍醐味なんだとわたしはおもっているのです。でも──まちがっちゃってたら、どうしよう。
簡潔で韻も踏んでる置手紙 丸山進
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