【詩50】る
- 2023/10/03
- 00:01
る
の まんなかの まるっと
してるところが なんだか
きになるんですよ
まんなかに くるっとしたところ
あるでしょう
き になるんだ と
はなしてくれたひとがいて
まあたしかに
どこかに帰るみたいに
るのまんなかがまるまってるけれども
わたしは
これですかあ
と あかるくいって 見せてくれた る の
まんなかを めがねのつるを
ゆびでさわりながら
ちゃんと みてみた
極小のひとがこのまるっこいところに
すみこめる き はしました
と わたしはきのきいたことを
いおうとして しっぱいしながら
いった
なにしろ る のこのまるっこいところに
ついて
いままで話したことがない
はじめてキスするようなもんだから
とわたしはおもった
もちろんそんなことはいってない
あくまでさわやかにいこうと
おもっていたので
そのあいだもそのひとは
気迫ある顔でじっと
る のまるっこいところを
ねちっこく みつめていた
凝視 ってことば
このひとのためにうまれたのかなあと
わたしはおもった(もちろんいわない)
る の ここ。
いずれみんながかえるところ
だとおもう
と そのひとが強(こわ)いこえで
いったので
いやだなあ とおもった
そういううちだひゃっけんみたいな
のり はいやだなあ
るるる
それからとつぜん
機関車 みたいに
思いがけないほうこうへ
わたしの回想が
はじまった
職場のオリエンテーションではじめてその日
会ったひとと
顔を2センチメートルくらい間近
のきょりにちかづけて
みつめあったことがある
そうしろといわれたからそうしたわけだが
その日はじめてあった他人と
キスしそうなくらい間近に顔を
ちかづけあって
わたしはそのとき
いまおもいかえせばだが
あいての虹彩の瞳のぐるぐるしたところに
この る の ○ をみていたように
おもった
この○をみながら
わたしは
しあわせになんかなれっこないんだ と
がっしり おもったことをおもいだした
そのひとは る のくるくるしたところ
をまだじっとみつめてる めでねばねばと
ねえ さわやかに生きましょうよ
わたしたちはこんなところにかえらないし
こんなところからきたんじゃない
ただの る ですよ。
る にそんなにこだわらないで
わたしたちには ゆ や ね や ぬ も
あるんだから
だから ね
あかるく ね
いきてるってたのしいよ
る のえいきょうなのか
わたしはわたしでもびっくりするような
ことを いった
わたしたちはそんなになかがいいほうじゃ
なかった
だから わたしにとって
る なんてどうでもいいことだった
あたりはすっかり暗い
もし森だったらアウトの時間だ
赤ずきんがあんなにちゃんと
おしえてくれたのに
どうして俺はこんなところにいるんだ
俺はここでなにをやってるんだ
おおかみのじかんじゃないか
あたりは えらく くらくなってる
ねえ
もうかえりましょう
る はわすれて
るるる
そう そうなんだよ
おじいちゃん、あなたのことを
ぼくは すごく 泣きたいくらい
そんけいしていたんだよ
ほんとうだよ しんじて
思いがけないほうこうに
汽車 として
わたしの回想がまた はじまった
- 関連記事
-
-
【詩】あたたかい眼鏡(「新人作品・入選・文月悠光選」『現代詩手帖』2015年6月号・掲載) 2015/05/28
-
【詩62】ひ 2023/10/15
-
【詩97】虹酔い 2023/11/19
-
【詩38】ミニヨンの歌 2023/09/21
-
【詩17】ぎゅうにゅう 2023/08/31
-
スポンサーサイト