【感想】八上桐子「みずうみの時間」『川柳ねじまき#1』
- 2014/08/08
- 19:58
弓なりに流れるみずうみの時間 八上桐子
【ドラえもんのポケットにある「由良川の全長」】
八上桐子さんの「みずうみの時間」です。
八上さんの連を〈極限のなかの無限〉という観点でみてみようとおもうんです。
無限はいかに閉じこめられるか。八上さんの連から抜き出してみます。
夕暮れがギターケースにしまわれる
眼裏といういちばん遠いところ
鳥は目を瞑って空を閉じました
風のないみずうみ囲む夕ごはん
父戻るきれいに包み直されて
由良川の全長を父言い遺す
「夕暮れ」や「いちばん遠いところ」や「空」や「風のないみずうみ」、「父」「由良川の全長」という無限なるものが有限によってパッケージングされていくダイナミズムがここにはあるのではないかと思うんですね。
以前から八上さんの「由良川の全長を父言い遺す」という句を考えていたんですが、この連のなかであらためてみると、これはパッケージングの句だったのではないかとおもったんです。
「由良川の全長」なんてほんとうはだれにもわからない。日々変化していくものだろうし、的確にそれをいいあてようとする「由良川の全長」ということば自体が〈由良川の全長〉を裏切り、由良川がその破れ目からあふれてくるはずです。
しかしそれは「言い遺」されたことによって「由良川の全長」としてパッケージングされたはずです。父の遺言というパウチ=ラミネート加工によって「由良川の全長」は語り手と父だけが知っている「由良川の全長」として〈真理〉化されたはずなんですね。
無限も、有限も、わたしは詩だとはおもわないんですが、しかし、無限を包含する有限は〈詩〉だとわたしはおもいます。なぜならそこには常に両極がひきあう葛藤と引力があり、つねに読み手によって解釈の破れ目と引き裂かれが出るからです。
「みずうみの時間」という「みずうみ(有限)」に限定されパウチされる「時間(無限)」にも注意したいとおもいます。
この世界の破れ目を拮抗しあう引力のなかでさがすこと。もしくは「やすやすと」そうしてしまっている主体を代替としてみつけだしてしまうこと。
そんな語り手は、たとえば、こんな猫を飼っています。
すやすやと仔猫からだを捨てている 八上桐子
【ドラえもんのポケットにある「由良川の全長」】
八上桐子さんの「みずうみの時間」です。
八上さんの連を〈極限のなかの無限〉という観点でみてみようとおもうんです。
無限はいかに閉じこめられるか。八上さんの連から抜き出してみます。
夕暮れがギターケースにしまわれる
眼裏といういちばん遠いところ
鳥は目を瞑って空を閉じました
風のないみずうみ囲む夕ごはん
父戻るきれいに包み直されて
由良川の全長を父言い遺す
「夕暮れ」や「いちばん遠いところ」や「空」や「風のないみずうみ」、「父」「由良川の全長」という無限なるものが有限によってパッケージングされていくダイナミズムがここにはあるのではないかと思うんですね。
以前から八上さんの「由良川の全長を父言い遺す」という句を考えていたんですが、この連のなかであらためてみると、これはパッケージングの句だったのではないかとおもったんです。
「由良川の全長」なんてほんとうはだれにもわからない。日々変化していくものだろうし、的確にそれをいいあてようとする「由良川の全長」ということば自体が〈由良川の全長〉を裏切り、由良川がその破れ目からあふれてくるはずです。
しかしそれは「言い遺」されたことによって「由良川の全長」としてパッケージングされたはずです。父の遺言というパウチ=ラミネート加工によって「由良川の全長」は語り手と父だけが知っている「由良川の全長」として〈真理〉化されたはずなんですね。
無限も、有限も、わたしは詩だとはおもわないんですが、しかし、無限を包含する有限は〈詩〉だとわたしはおもいます。なぜならそこには常に両極がひきあう葛藤と引力があり、つねに読み手によって解釈の破れ目と引き裂かれが出るからです。
「みずうみの時間」という「みずうみ(有限)」に限定されパウチされる「時間(無限)」にも注意したいとおもいます。
この世界の破れ目を拮抗しあう引力のなかでさがすこと。もしくは「やすやすと」そうしてしまっている主体を代替としてみつけだしてしまうこと。
そんな語り手は、たとえば、こんな猫を飼っています。
すやすやと仔猫からだを捨てている 八上桐子
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