【あとがき】平倫子『ルイス・キャロル 身体医文化の実相』のあとがき
- 2014/08/18
- 05:04
『鏡の国のアリス』で、ハンプティ・ダンプティーが使ったむずかしいことば、「不可入性」の謎が解ける日を、ひそかに願いつづけてきましたが、彼の座っている高塀がアサイラムの高壁や塀、ドアと結びついたとき、長年の疑問は解けました。『鏡の国のアリス』が、「夢を見たのはどっち?」という問いかけで終わることからも分かりますが、何をどう認識するかで誰でもどちらにも立ちうる、とキャロルは言いたかったのではないでしょうか。すぐにロイ・ポーターにつながると思いました。
オックスフォードのウォンフォード・ホスピタルの重厚な建物の古文書資料室で、2003年の9月の暑い日にドアを開けたまま一人で、精神病院監察官をしていたキャロルの叔父さんの著名のある古いケース・ブックを繰りながら、メランコリーの症状を書き取っていたとき、はだしの患者さんが入ってきて「先祖のことを知りたいのだが」と話しかけてきたときには、一瞬びっくりしましたが、「わたしはゲストですから分かりません」と言うとすぐに帰ってゆきました。あとで室長にそのことを告げると、「医者とまちがえたのでしょう。ドアは閉めて置くように」といわれて気を引き締めたのも、いまは懐かしい思い出です。
平倫子「あとがき」『ルイス・キャロル 身体医文化の実相』
オックスフォードのウォンフォード・ホスピタルの重厚な建物の古文書資料室で、2003年の9月の暑い日にドアを開けたまま一人で、精神病院監察官をしていたキャロルの叔父さんの著名のある古いケース・ブックを繰りながら、メランコリーの症状を書き取っていたとき、はだしの患者さんが入ってきて「先祖のことを知りたいのだが」と話しかけてきたときには、一瞬びっくりしましたが、「わたしはゲストですから分かりません」と言うとすぐに帰ってゆきました。あとで室長にそのことを告げると、「医者とまちがえたのでしょう。ドアは閉めて置くように」といわれて気を引き締めたのも、いまは懐かしい思い出です。
平倫子「あとがき」『ルイス・キャロル 身体医文化の実相』
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