【感想】悲しくてあなたの手話がわからない 月波与生
- 2014/04/25
- 23:10
悲しくてあなたの手話がわからない 月波与生
大好きな句なんですが、この句の画期的な点は、語り手が〈わからない〉の領域に踏み込んでしまっているところだと思うんです。
この句の大事な点は、〈あなた〉とのコミュニケーションが〈言語〉ではなく、「手話」という非言語的交通によってなされている点だとおもうんです。
川柳においては、観察する視覚主体が基本的には特権化されることになると思うんですが、この語り手の場合、〈悲しみ〉によって観察行為にノイズが走っている。視覚主体であることに亀裂がはいっています。そのため、手話による非言語的交通が「わからない」というかたちで遮断されています。
しかし、大事な点は、それが「ことば」であれ「手話」であれ、悲しくても〈わかっ〉てしまうことなのではなくて、悲しみにひたされたときに〈わからな〉くなってしまうこと、しかしその〈わからな〉さによって目の前にいる〈あなた〉がわたしにとってどれぐらい比重を占めた深さをもっていたかをひるがえるかたちで体感することなのではないかとおもうのです。
ここでうたわれているのは、たぶん、〈わかっ〉てしまうことのあやうさだとおもうんです。
けれども、〈わからな〉さから「あなた」との交通が遮断された状態で、それでも「あなた」という二人称からもういちど一人称主体をはじめてみることをうたったのがこの句ではないかとおもうんです。
川柳における他者と理解の相関関係をとてもビビッドに描いている川柳なのではないかとおもいます。
大好きな句なんですが、この句の画期的な点は、語り手が〈わからない〉の領域に踏み込んでしまっているところだと思うんです。
この句の大事な点は、〈あなた〉とのコミュニケーションが〈言語〉ではなく、「手話」という非言語的交通によってなされている点だとおもうんです。
川柳においては、観察する視覚主体が基本的には特権化されることになると思うんですが、この語り手の場合、〈悲しみ〉によって観察行為にノイズが走っている。視覚主体であることに亀裂がはいっています。そのため、手話による非言語的交通が「わからない」というかたちで遮断されています。
しかし、大事な点は、それが「ことば」であれ「手話」であれ、悲しくても〈わかっ〉てしまうことなのではなくて、悲しみにひたされたときに〈わからな〉くなってしまうこと、しかしその〈わからな〉さによって目の前にいる〈あなた〉がわたしにとってどれぐらい比重を占めた深さをもっていたかをひるがえるかたちで体感することなのではないかとおもうのです。
ここでうたわれているのは、たぶん、〈わかっ〉てしまうことのあやうさだとおもうんです。
けれども、〈わからな〉さから「あなた」との交通が遮断された状態で、それでも「あなた」という二人称からもういちど一人称主体をはじめてみることをうたったのがこの句ではないかとおもうんです。
川柳における他者と理解の相関関係をとてもビビッドに描いている川柳なのではないかとおもいます。
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