【短歌】線香の…(毎日新聞・毎日歌壇2014/2/24掲載 加藤治郎選)
- 2014/03/30
- 20:20
線香のかおりがふいにたちこめる電車に乗って、季語不毛地帯 柳本々々
(毎日新聞・毎日歌壇2014/2/24掲載 加藤治郎選)
【自(分で)解(いてみる)-そうだ、季語不毛地帯いこう。-】
山手線に乗っていたときにとつぜん線香の香りが立ちこめてきて、なんだろう、とおもったことがある。なんだ、どうしたんだ、と。
電車という空間は、だしぬけに他者に遭遇する空間なのだけれど、そのとき他者だったのは〈香り〉だった。しかも線香の香りという意味の拘束がつよい香りだ。
そういったふいにあらわれた他者によってなにもいえなくなってしまうような、ことばの喪のような状況のなかで、それでも電車に乗っている以上はわたしはどこかに運ばれざるをえない。
わたしがどこかにいくことと、わたしが発話することはここではなんの連絡も関係ももたない。
そんなふしぎなきもちのなかでつくってみたうた。
このうたを読んでくれた方が「線香のかおり」というのは宗教的であり、だから、悟り=無の空間に語り手は近づいていったのではないか、と鑑賞してくださって、ああそうか、だからことばの零度のような場所=季語不毛地帯にむかっていったのかな、とおもったことがあった。
短歌はむしろじぶんで読むよりも他者のほうがあれこれ意味を読んでくれることが大きいので、わたしもわたしから疎外されるといいな、といつもおもっている。わたしから。
(毎日新聞・毎日歌壇2014/2/24掲載 加藤治郎選)
【自(分で)解(いてみる)-そうだ、季語不毛地帯いこう。-】
山手線に乗っていたときにとつぜん線香の香りが立ちこめてきて、なんだろう、とおもったことがある。なんだ、どうしたんだ、と。
電車という空間は、だしぬけに他者に遭遇する空間なのだけれど、そのとき他者だったのは〈香り〉だった。しかも線香の香りという意味の拘束がつよい香りだ。
そういったふいにあらわれた他者によってなにもいえなくなってしまうような、ことばの喪のような状況のなかで、それでも電車に乗っている以上はわたしはどこかに運ばれざるをえない。
わたしがどこかにいくことと、わたしが発話することはここではなんの連絡も関係ももたない。
そんなふしぎなきもちのなかでつくってみたうた。
このうたを読んでくれた方が「線香のかおり」というのは宗教的であり、だから、悟り=無の空間に語り手は近づいていったのではないか、と鑑賞してくださって、ああそうか、だからことばの零度のような場所=季語不毛地帯にむかっていったのかな、とおもったことがあった。
短歌はむしろじぶんで読むよりも他者のほうがあれこれ意味を読んでくれることが大きいので、わたしもわたしから疎外されるといいな、といつもおもっている。わたしから。
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