【短歌・連作】「文学で、いこう。」『かばん』2014年9月号
- 2014/09/11
- 22:02
【詞書】そういうきれいな言葉は、自分じゃぜったいに食べないフルーツゼリーみたいなものなんだな チェーホフ『かもめ』
桐島が部活をやめるとの声にふりむくひとを読書家とする
『罪と罰』・ラジオ体操・夏休み 午前七時のラスコリニコフ
恋文が四部構成に鳴っている、カラマーゾフは君だったのか
チェーホフの『桜の園』の深奥で微震している機械に触れる
眼鏡史をひもといている 瀧廉太郎、ハリー・ポッターもぜんぶここにいる
美容院洗髪台で仰向けにラプンツェルしてタオルずれて、眼
本棚で繁殖してる艶声は、夏目春樹の『ノルウェイの猫』
チェシャ猫のn匹目乗せるきみのひざ ゼリーのような文学でいこう
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●さいきん、夏目漱石が『ノルウェイの森』を書いたんだということにして夏目漱石『ノルウェイの森』を読んでいます。【柳本々々】
「添え書きの花園」
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本号の「前号評」にて、田中ましろさん、茂泉朋子さんから、評をいただきました。ありがとうございました!
ティッシュってきみの香りを記録する装置なんだと鼻から思う 柳本々々
とにかく「ティッシュ」がたくさん出てくる連作。その中でもこのお歌の結句に惹かれました。 「思う」のはもちろん脳なんですが、匂いをかいだ瞬間に脊髄反射のように閃いた感じが「鼻から」に託されています。嗅覚と記憶は密接な関係があったはず。そのあたりもこの面白い表現の支えになっていますね。 田中ましろ「七月号を読む」『かばん』2014年9月号
ティッシュってみなしまう場所ちがってる こころの地図の伊能忠敬 柳本々々
よくまあティッシュでこれだけの世界を……と呆れ感心させられる一連。人体のボディラインを地図として、作中の主体は、ティッシュを誰がどこから取り出してどこへしまったか、全てマッピングしている。作者は普段から伊能忠敬みたいに世界をくまなく観察しているのであろうか。 茂泉朋子「七月号評」『かばん』2014年9月号
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道路沿いには朽ち果てた週刊誌なお朽ち果てている最中の 田中ましろ
お前と暮らす日々が始まるヨーグルトまみれのフルーツ押しつけあって 茂泉朋子
今月号かばんの表紙絵は、東直子さんの「3びきのマレーぐま」です。
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