【感想】マスクしてそれでも笑顔だとわかる 江渡華子
- 2014/10/01
- 07:13
マスクしてそれでも笑顔だとわかる 江渡華子
【マスクをかけた俳句がほほえむ】
俳句という形式は、ときどき、〈知/不知/可知/不可知〉といった領域と深く関わっているんじゃないかと思っていて、その〈知/不知〉のありようを端的に描き出すのが俳句なのではないかとおもうんですね。
ひかりからかたちにもどる独楽ひとつ 神野紗希
たとえばこの神野さんの句は、〈可知〉の領域にあります。
「ひかりからかたち」へと観察し記述できる語り手がいて、はじめて成立する句です。
コート着るあなたが何か呟いた 今井心
一方今井心さんのこの句は、〈不可知〉の句です。
俳句形式でなければ、「あなたが何」をつぶやいたかはわかるかもしれません。そのまま、聞き返せばいいのです。聞き返すことがためらわれるようであれば、そのままもっと観察をつづければいい。
しかし、そのようなロングスパンの観察や知のありようを俳句形式はゆるしていません。
短歌だったら、まだ知のスパンがあるかもしれない。
しかし、俳句の短さはそれを許しません。
江渡さんの「マスクしてそれでも笑顔だとわか」ったのも、俳句だからこその〈知〉の領域です。
これ以上、長いとたぶんいろんな他のことも観察し、わかってしまうので、結果としてこれだけの、しかしこれほどの〈知〉が成立しません。
だから、江渡さんのこの句には、俳句という表現形式の〈知〉のありようが、端的/短的にあらわれているとおもうのです。
俳句だけが形成してきた/いる〈知/不知〉の領域。
俳句特有の時間と、非抒情形式が、みいだせる〈わかる/わからない〉領域。
そのことについて、ときどき、かんがえています。しったふうな、しらないようなかおをして。
梅雨冷のトイレの中はひとりきり 江渡華子
【マスクをかけた俳句がほほえむ】
俳句という形式は、ときどき、〈知/不知/可知/不可知〉といった領域と深く関わっているんじゃないかと思っていて、その〈知/不知〉のありようを端的に描き出すのが俳句なのではないかとおもうんですね。
ひかりからかたちにもどる独楽ひとつ 神野紗希
たとえばこの神野さんの句は、〈可知〉の領域にあります。
「ひかりからかたち」へと観察し記述できる語り手がいて、はじめて成立する句です。
コート着るあなたが何か呟いた 今井心
一方今井心さんのこの句は、〈不可知〉の句です。
俳句形式でなければ、「あなたが何」をつぶやいたかはわかるかもしれません。そのまま、聞き返せばいいのです。聞き返すことがためらわれるようであれば、そのままもっと観察をつづければいい。
しかし、そのようなロングスパンの観察や知のありようを俳句形式はゆるしていません。
短歌だったら、まだ知のスパンがあるかもしれない。
しかし、俳句の短さはそれを許しません。
江渡さんの「マスクしてそれでも笑顔だとわか」ったのも、俳句だからこその〈知〉の領域です。
これ以上、長いとたぶんいろんな他のことも観察し、わかってしまうので、結果としてこれだけの、しかしこれほどの〈知〉が成立しません。
だから、江渡さんのこの句には、俳句という表現形式の〈知〉のありようが、端的/短的にあらわれているとおもうのです。
俳句だけが形成してきた/いる〈知/不知〉の領域。
俳句特有の時間と、非抒情形式が、みいだせる〈わかる/わからない〉領域。
そのことについて、ときどき、かんがえています。しったふうな、しらないようなかおをして。
梅雨冷のトイレの中はひとりきり 江渡華子
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