【感想】「ナイス提案!」「ナイス提案!」うす闇に叫ぶわたしを妻が揺さぶる 堀合昇平
- 2014/10/01
- 12:39
「ナイス提案!」「ナイス提案!」うす闇に叫ぶわたしを妻が揺さぶる 堀合昇平
【「ナイス提案!」と叫べなかったわたしから】
不思議な短歌だとおもうんですが、その不思議さは、語り手の主体が分岐しているところにあるとおもうんです。
作中主体の分岐といったらいいでしょうか。
まず、「ナイス提案!」と叫びつづけている〈わたし〉がいます。
この〈わたし〉は、なかば〈わたし〉のなかに没入状態にあるので、「妻が揺さぶる」ほどです。
つまり、「ナイス提案!」と「叫ぶわたし」はおそらく揺さぶる妻がみえていないし、揺さぶられていることに気が付いていません。
あえていえば、「ナイス提案!」の世界にいるのであり、「」(かぎかっこ)に完全に閉じられた世界に「叫ぶわたし」はいます。
ところが、もうひとりの分岐した〈わたし〉が出てくることが重要です。
その没入状態にある叫んでいるわたしと妻の様子をみつめ、語り、記述している〈わたし〉です。
「ナイス提案!」と叫ばない〈わたし〉です。
だからこの歌にはふたりの〈わたし〉がいます。
「ナイス提案!」と叫ぶナイスなわたしと、「ナイス提案!」と叫んでいないナイスでないわたしです。
だからこそ、この「ナイス提案!」は、相対化されています。リフレインされ、エクスクラメーションさえしているわたしですが、その「ナイス」には怪しさがあります。と、わたしは冷静にみつめています。
ここでその相対化を起動する装置となっているのが、〈妻〉です。
夏目漱石の小説でもそうなんですが、妻は夫を相対化する装置になっています。
夫婦というのは、カップル幻想=対幻想でありながらも、反・対幻想としてわたしがわたしの発話を保証する自己幻想さえ打ち砕くものとして《形式的に》機能することがあります。
この《形式性》がわりあい、大事なのではないかとおもっています。
つまり、妻は、「それナイス提案じゃない!」と叫び返すのではなく、ふだんの夫とはちがう夫をゆさぶるという形式のズレから、夫を相対化しているのです。
これが、形式による相対化です。
堀合さんのこの「ナイス提案!」の歌には、そうした形式のズレによってズレていく狂気が描かれているようにもおもいます。
短歌=言語=記述にまたズレてゆく、俺の〈アグリー〉のズレも。
俺は別に英語が得意なわけではなくしかし「アグリーです」と答えた 堀合昇平
【「ナイス提案!」と叫べなかったわたしから】
不思議な短歌だとおもうんですが、その不思議さは、語り手の主体が分岐しているところにあるとおもうんです。
作中主体の分岐といったらいいでしょうか。
まず、「ナイス提案!」と叫びつづけている〈わたし〉がいます。
この〈わたし〉は、なかば〈わたし〉のなかに没入状態にあるので、「妻が揺さぶる」ほどです。
つまり、「ナイス提案!」と「叫ぶわたし」はおそらく揺さぶる妻がみえていないし、揺さぶられていることに気が付いていません。
あえていえば、「ナイス提案!」の世界にいるのであり、「」(かぎかっこ)に完全に閉じられた世界に「叫ぶわたし」はいます。
ところが、もうひとりの分岐した〈わたし〉が出てくることが重要です。
その没入状態にある叫んでいるわたしと妻の様子をみつめ、語り、記述している〈わたし〉です。
「ナイス提案!」と叫ばない〈わたし〉です。
だからこの歌にはふたりの〈わたし〉がいます。
「ナイス提案!」と叫ぶナイスなわたしと、「ナイス提案!」と叫んでいないナイスでないわたしです。
だからこそ、この「ナイス提案!」は、相対化されています。リフレインされ、エクスクラメーションさえしているわたしですが、その「ナイス」には怪しさがあります。と、わたしは冷静にみつめています。
ここでその相対化を起動する装置となっているのが、〈妻〉です。
夏目漱石の小説でもそうなんですが、妻は夫を相対化する装置になっています。
夫婦というのは、カップル幻想=対幻想でありながらも、反・対幻想としてわたしがわたしの発話を保証する自己幻想さえ打ち砕くものとして《形式的に》機能することがあります。
この《形式性》がわりあい、大事なのではないかとおもっています。
つまり、妻は、「それナイス提案じゃない!」と叫び返すのではなく、ふだんの夫とはちがう夫をゆさぶるという形式のズレから、夫を相対化しているのです。
これが、形式による相対化です。
堀合さんのこの「ナイス提案!」の歌には、そうした形式のズレによってズレていく狂気が描かれているようにもおもいます。
短歌=言語=記述にまたズレてゆく、俺の〈アグリー〉のズレも。
俺は別に英語が得意なわけではなくしかし「アグリーです」と答えた 堀合昇平
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