【感想】ひさしぶりのさよならですねゆく街のゆくさきざきで君がゆれてた 東直子
- 2014/10/02
- 12:47
ひさしぶりのさよならですねゆく街のゆくさきざきで君がゆれてた 東直子
【さよなら、ってなんだろう】
さよなら、ってなんなんだろうとよく考えていんですが、この歌が「さよならですね」といっているのに、なにか不思議な感じをもたらすのは、「さよならですね」のあとの「君」の〈普遍性=遍在性〉にあるとおもうんですね。
「ゆく街のゆくさきざきで君がゆれてた」っていうことは、「君」があまねくかたちで遍在している。しかも、「ゆく街の」と言っているので、語り手が「ゆく」行為をすることによってそれとの関わりで「君」があらわれる。
だから、語り手が「ゆく」行為をすればかならず「君」はあらわれる。
だから、いいかえれば、「君」がいないなんてない場所なんてない。
だとしたら、「さよなら」とは、いったい、なんなのか。
ひとつこの歌がその答えを指し示しているのは、わたしはこの歌の結句にある「君がゆれてた」なんじゃないかとおもうんです。
ゆく街のゆくさきざきで君がゆれてる。
まんべんなくどこにでもいる君というのは、語り手の心象にあり、ゆくさきざきで投影しているからこそ、君があらわれるのだとかんがえてみます。
そしてその君は投影された語り手の想像界的なイメージだからこそ、ゆれているのだと。リアルで現実的な「君」はゆれずに、固定された身体をもって語り手とは別の場所で、遍在することなく、偏在して暮らしてる。
だから、ここでいう「ひさしぶりのさよなら」とは、語り手が、「ゆく街のゆくさきざきで君がゆれてた」自分自身と対峙し、その〈ゆれ〉と、君とわたしの関係における〈ゆれ〉と決別することなのではないかとおもうんです。
だからこの「さよなら」は、「君」への「さよなら」なのではなく、この語り手自身の、〈わたし〉への「さよなら」なのではないかとおもうのです。だから結語の「た」という過去形もビビッドな効果をもってきます。もう語り手は上の句で「さよなら」が言えたんですから。
そして「ひさしぶりに」きちんと〈わたし〉に「さよなら」をいえたときに、はじめて語り手は「君」のいない〈どこか〉に「ゆく」ことができるのではないかとおもうのです。
そのときはじめて語り手にとって「ゆく」ということが自分のなかに回収されてしまう〈自・動詞〉ではなく、目的地をもった、〈他・動詞〉になることができるのではないかと。
ねえみてよ霜柱がものすごい ということももう言わないでおく 東直子
【さよなら、ってなんだろう】
さよなら、ってなんなんだろうとよく考えていんですが、この歌が「さよならですね」といっているのに、なにか不思議な感じをもたらすのは、「さよならですね」のあとの「君」の〈普遍性=遍在性〉にあるとおもうんですね。
「ゆく街のゆくさきざきで君がゆれてた」っていうことは、「君」があまねくかたちで遍在している。しかも、「ゆく街の」と言っているので、語り手が「ゆく」行為をすることによってそれとの関わりで「君」があらわれる。
だから、語り手が「ゆく」行為をすればかならず「君」はあらわれる。
だから、いいかえれば、「君」がいないなんてない場所なんてない。
だとしたら、「さよなら」とは、いったい、なんなのか。
ひとつこの歌がその答えを指し示しているのは、わたしはこの歌の結句にある「君がゆれてた」なんじゃないかとおもうんです。
ゆく街のゆくさきざきで君がゆれてる。
まんべんなくどこにでもいる君というのは、語り手の心象にあり、ゆくさきざきで投影しているからこそ、君があらわれるのだとかんがえてみます。
そしてその君は投影された語り手の想像界的なイメージだからこそ、ゆれているのだと。リアルで現実的な「君」はゆれずに、固定された身体をもって語り手とは別の場所で、遍在することなく、偏在して暮らしてる。
だから、ここでいう「ひさしぶりのさよなら」とは、語り手が、「ゆく街のゆくさきざきで君がゆれてた」自分自身と対峙し、その〈ゆれ〉と、君とわたしの関係における〈ゆれ〉と決別することなのではないかとおもうんです。
だからこの「さよなら」は、「君」への「さよなら」なのではなく、この語り手自身の、〈わたし〉への「さよなら」なのではないかとおもうのです。だから結語の「た」という過去形もビビッドな効果をもってきます。もう語り手は上の句で「さよなら」が言えたんですから。
そして「ひさしぶりに」きちんと〈わたし〉に「さよなら」をいえたときに、はじめて語り手は「君」のいない〈どこか〉に「ゆく」ことができるのではないかとおもうのです。
そのときはじめて語り手にとって「ゆく」ということが自分のなかに回収されてしまう〈自・動詞〉ではなく、目的地をもった、〈他・動詞〉になることができるのではないかと。
ねえみてよ霜柱がものすごい ということももう言わないでおく 東直子
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