【感想】宮本佳世乃『句集 鳥飛ぶ仕組み』-さやうならは、ない-
- 2014/10/03
- 23:58
おはやう冬桜みんなみへひかり 宮本佳世乃
以前、宮本さんの〈さやうなら〉の句の感想を書いてみたんですが、今回は逆の角度から、〈not さやうなら〉の句をみてみたいとおもいます。
土曜日が終はらぬやうに踊りけり 宮本佳世乃
この句では句末の切れ字「けり」の感慨(踊ったんだよなあ、踊ったんだよね)をそのまま終わらせてしまわないように、「やう」が効果的な意志として現れているとおもいます。
「さ〈やう〉なら」の〈やう〉にも宮本さんの句には意志があったんですが、この句においても切れる直前に、〈やう〉を置くことによって意志+感慨が続いていく効果をあらわしているとおもいます。
土曜日は終わるかもしれないけれど、構文上はずっと続いていくからね、という意志のあらわれです。
この〈やうに/けり〉構文がもうひとつ象徴的にあらわれている句があります。
夕焼を壊さぬやうに脱ぎにけり 宮本佳世乃
ここでも〈やう〉が〈けり〉の切れ字の前に置かれることによって切れ字の感慨が意志として響いてきます。
どちらも、土曜日を終わらせない、夕焼けを壊さない、という〈not さやうなら〉への意志です。
これら二句からわかるのは、実は切れ字というのは、切れ字そのものの効果だけではなくて、構文として関係的に意味をもってきたり、もしくはその〈切れ〉が振幅するのではないか、ということです。
俳句において〈切れ字〉というのは、独特の〈さようなら〉の発明だと思います。あえてさよならを切り出すことによって、そこから離陸し、もっとひろい世界を切り出していく。読み手にさよならをいうことであえてつまずかせることで、シーンの切り換え、チャプターのような分節として切れつつ・切れないでシーンを切り出していく。
でもその離陸する前に、ハンドルを取る場合もあるのではないかということをおもっています。それによってそのつど一回的な切れ字を生成する。
だから逆に〈場〉との関係によっても切れ字のありかたが変化していくようにもおもうんです。
切れ字がもし切れないさようならのありかたであり、そこに流れるプールをかけあわせながらも、みずからともだちとの新しい〈さよなら〉を描いてみるのだとしたら。
ともだちの流れてこないプールかな 宮本佳世乃
以前、宮本さんの〈さやうなら〉の句の感想を書いてみたんですが、今回は逆の角度から、〈not さやうなら〉の句をみてみたいとおもいます。
土曜日が終はらぬやうに踊りけり 宮本佳世乃
この句では句末の切れ字「けり」の感慨(踊ったんだよなあ、踊ったんだよね)をそのまま終わらせてしまわないように、「やう」が効果的な意志として現れているとおもいます。
「さ〈やう〉なら」の〈やう〉にも宮本さんの句には意志があったんですが、この句においても切れる直前に、〈やう〉を置くことによって意志+感慨が続いていく効果をあらわしているとおもいます。
土曜日は終わるかもしれないけれど、構文上はずっと続いていくからね、という意志のあらわれです。
この〈やうに/けり〉構文がもうひとつ象徴的にあらわれている句があります。
夕焼を壊さぬやうに脱ぎにけり 宮本佳世乃
ここでも〈やう〉が〈けり〉の切れ字の前に置かれることによって切れ字の感慨が意志として響いてきます。
どちらも、土曜日を終わらせない、夕焼けを壊さない、という〈not さやうなら〉への意志です。
これら二句からわかるのは、実は切れ字というのは、切れ字そのものの効果だけではなくて、構文として関係的に意味をもってきたり、もしくはその〈切れ〉が振幅するのではないか、ということです。
俳句において〈切れ字〉というのは、独特の〈さようなら〉の発明だと思います。あえてさよならを切り出すことによって、そこから離陸し、もっとひろい世界を切り出していく。読み手にさよならをいうことであえてつまずかせることで、シーンの切り換え、チャプターのような分節として切れつつ・切れないでシーンを切り出していく。
でもその離陸する前に、ハンドルを取る場合もあるのではないかということをおもっています。それによってそのつど一回的な切れ字を生成する。
だから逆に〈場〉との関係によっても切れ字のありかたが変化していくようにもおもうんです。
切れ字がもし切れないさようならのありかたであり、そこに流れるプールをかけあわせながらも、みずからともだちとの新しい〈さよなら〉を描いてみるのだとしたら。
ともだちの流れてこないプールかな 宮本佳世乃
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