【感想】コンセントへ刺そうとしたら向こうからすでに刺されていたのでやめた 伊舎堂仁
- 2014/10/06
- 18:01
コンセントへ刺そうとしたら向こうからすでに刺されていたのでやめた 伊舎堂仁
【くる。きっとくる。むこうがくる】
第三回怪談短歌コンテストで、選者の川野里子さんが大賞に選んだ歌です。
伊舎堂さんのコンセントの歌をはじめてみたときとてもおもしろいしこわい歌だとおもったんですが、今回「短歌ください」で伊舎堂さんの〈初体験〉の歌をみたときにそのわたしが感じたこわさというのは、〈むこうがくる〉こわさだったのではないかとおもったので感想を書いてみたいとおもいます。
この〈むこうがくる〉という〈むこう〉はほとんだ彼岸に近い場所であり、本来は関わることのない、また、〈むこうからくる〉はずもない〈むこう〉のことです。
だから、〈異界〉といってもいいかもしれません。
たとえば、コンセントを刺そうとしたときに、それはさこちらから刺すものであり、むこうから刺されるものではないのだけれど、むこうから刺されている。
そして結語に「やめた」と書いてあるとおり、〈むこう〉からのあるはずのなかった行動によって〈こちら〉の行動原理が変わってきます。
それが〈こわさ〉なのではないかとおもいます。
こわさをまとめると、こうです。
① 本来あるはずのない〈むこう〉があるということ。
② 本来あるはずのない〈むこう〉があり、かつ、〈こちら〉にきてしまっていること。
③ 本来あるはずのない〈むこう〉があり、かつ、〈こちら〉にきてしまっており、かつ、〈こちら〉の様相を変化させてしまっていること。
ひとは、なぜなにかを〈こわい〉と思うのかは、端的にいえば、〈あちら〉側の論理によっと〈こちら〉側の論理が変わってしまうからではないかとおもうんです。
たとえばそれが江戸川乱歩のような小説でも、『呪怨』のような映画でもいいんですが、〈あちら〉の論理に〈こちら〉の論理が侵されそうになる。
そのときひとは〈こわい〉とおもうのではないかと。
たとえば、貞子が象徴的だとおもうんですが、貞子はテレビの〈むこう〉から〈こちら〉へやってきます。
本来はテレビからひとはやってこられないという〈こちらの論理〉を破壊して、〈むこうの論理〉でもって〈こちら〉に侵食してくるわけです。
これがこわいのは、ホラー映画というのは、スクリーンやテレビを通してみているために、どんなにこわくても、メディアの特性上ぜったいに〈こちら〉の論理には立てないという物質的なメディアによる〈セキュリティー〉があったのですが、貞子はそうしたメディアのセキュリティー自体に自己言及しながらテレビから這い出てくるわけです。
〈むこう〉はとつぜん、やってきます。
〈むこう〉から連れていかれ、〈むこう〉の論理された部屋にこれから軟禁される場合だってありうるわけです。
たとえば、
万引きで連れて行かれた部屋は表彰状だらけで見ていたら来る 伊舎堂仁「短歌ください」『ダ・ヴィンチ』2014年11月号
【くる。きっとくる。むこうがくる】
第三回怪談短歌コンテストで、選者の川野里子さんが大賞に選んだ歌です。
伊舎堂さんのコンセントの歌をはじめてみたときとてもおもしろいしこわい歌だとおもったんですが、今回「短歌ください」で伊舎堂さんの〈初体験〉の歌をみたときにそのわたしが感じたこわさというのは、〈むこうがくる〉こわさだったのではないかとおもったので感想を書いてみたいとおもいます。
この〈むこうがくる〉という〈むこう〉はほとんだ彼岸に近い場所であり、本来は関わることのない、また、〈むこうからくる〉はずもない〈むこう〉のことです。
だから、〈異界〉といってもいいかもしれません。
たとえば、コンセントを刺そうとしたときに、それはさこちらから刺すものであり、むこうから刺されるものではないのだけれど、むこうから刺されている。
そして結語に「やめた」と書いてあるとおり、〈むこう〉からのあるはずのなかった行動によって〈こちら〉の行動原理が変わってきます。
それが〈こわさ〉なのではないかとおもいます。
こわさをまとめると、こうです。
① 本来あるはずのない〈むこう〉があるということ。
② 本来あるはずのない〈むこう〉があり、かつ、〈こちら〉にきてしまっていること。
③ 本来あるはずのない〈むこう〉があり、かつ、〈こちら〉にきてしまっており、かつ、〈こちら〉の様相を変化させてしまっていること。
ひとは、なぜなにかを〈こわい〉と思うのかは、端的にいえば、〈あちら〉側の論理によっと〈こちら〉側の論理が変わってしまうからではないかとおもうんです。
たとえばそれが江戸川乱歩のような小説でも、『呪怨』のような映画でもいいんですが、〈あちら〉の論理に〈こちら〉の論理が侵されそうになる。
そのときひとは〈こわい〉とおもうのではないかと。
たとえば、貞子が象徴的だとおもうんですが、貞子はテレビの〈むこう〉から〈こちら〉へやってきます。
本来はテレビからひとはやってこられないという〈こちらの論理〉を破壊して、〈むこうの論理〉でもって〈こちら〉に侵食してくるわけです。
これがこわいのは、ホラー映画というのは、スクリーンやテレビを通してみているために、どんなにこわくても、メディアの特性上ぜったいに〈こちら〉の論理には立てないという物質的なメディアによる〈セキュリティー〉があったのですが、貞子はそうしたメディアのセキュリティー自体に自己言及しながらテレビから這い出てくるわけです。
〈むこう〉はとつぜん、やってきます。
〈むこう〉から連れていかれ、〈むこう〉の論理された部屋にこれから軟禁される場合だってありうるわけです。
たとえば、
万引きで連れて行かれた部屋は表彰状だらけで見ていたら来る 伊舎堂仁「短歌ください」『ダ・ヴィンチ』2014年11月号
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