【短歌・連作】「題詠としてのうたびと(ウサギ連れない)」『かばん』2014年10月号
- 2014/10/11
- 16:34
【詞書】歌、卵、ル、虹、凩、好きな字を拾ひ書きして世界が欠ける 荻原裕幸
終バスが水族館のレプリカで加藤治郎の歌集をひらく
ほむほむのメガネに憑いた精霊が短歌を吸って詩力をあげる
窓枠にまたがりながら真夜中にデジタル・クッキーまきちらす☆☆☆☆
文通をさせろと脅す手紙魔は恋人の恋人の恋人
病院で「カトウ・ジロウさん!」呼ぶ声にギプスを羽に少年が、ちっ
ゑゑゑゑやぽぽぽぽだけの挨拶を交わしてる午後せっくすがとおい
終バスの〈降りますランプ〉の誘惑に最後のあなたが炎(ほむら)を灯す
ぷあぷあと叫ぶ日溜まりに話しかけ夏のおわりにうたびとになる
柳本々々「題詠としてのうたびと(ウサギ連れない)」『かばん』2014年10月号
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●こないだコンビニで↓←↑←とコマンド入力したら「あたためますか」じゃないことばが出ました。すごくあたたマりました。【柳本々々】
「添え書きの花園」
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『かばん』2014年10月号の「前号評」にて、高柳蕗子さん、雨宮司さん、田中有芽子さんから、評をいただきました。ありがとうございました!
だしぬけに桜井くんがぬるぬるで大山さんの呪いとわかる 柳本々々
誰の呪いかすぐに「わかる」ほどの狭い人間関係の怖さがなまなましい。その点は手柄が大きい歌だと思う。
「8秒後、ワープします。」の八首は八通りの「ぬるぬる」が描かれていて、いわば “8つの扉” で、この八首をヒントに、「ぬるぬる」がどういう感覚を考えさせる構成のように見える。そうなると、単独では非常に面白い掲出歌が、 “8つの扉” のヒントとしてはあまり有効でなくて、結局、「ぬるぬる」は、ある種の不快な違和感らしい、という程度にとどまり、連作としては構成に工夫がほしい。 高柳蕗子「「かばん」八月号の事件簿 憑依、閉塞、そして空」
戸田さんの机のなかのぬるぬるを知ってる俺は次のいけにえ 柳本々々
「ぬるぬる」で何を想像できるかで、歌の幅が拡がる気がする。エロスを連続性するのはた易いが、様々な生物の粘膜や粘液を想像するのも的外れではない。さて、どう採るか? 雨宮司「八月号評」
ワープ時に隣に座る馬場さんがぬるぬるしてく超光速で 柳本々々
ワープ時は、なんとなく薄くなっていったり、キラキラしたり、乱れた画像みたいになりそうな根拠のないイメージがあったんだけど、「ぬるぬる」するとは。なんか実感がこもっています。 田中有芽子「八月号を読んで」
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死んでいる父という父さかさまに覗いて通るあたしの短歌 高柳蕗子
滅びの日劇的なものは何もなく私は毛糸を編んでいました 雨宮司
邪気のない趣味に征服の香りあり(全部)(集める)(操る)(俺が) 田中有芽子
今月号かばんの表紙絵は、東直子さんの「蒲にシカ」です。
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