【短歌】マッチ売りの…(「第74回 短歌ください(お題:ティッシュ)」『ダ・ヴィンチ』2014年6月号掲載 穂村弘 選)
- 2014/05/07
- 21:14
マッチ売りの少女やパトラッシュのとなり リアルにティッシュ配りする俺 柳本々々
(「第74回 短歌ください(お題:ティッシュ)」『ダ・ヴィンチ』2014年6月号掲載 穂村弘 選)
【自(分で)解(いてみる)-召されゆくパトラッシュのかたわらでティッシュを配りつつ-】
選者の穂村弘さんから次のコメントをいただきました。
「街角で「ティッシュ配りする俺」は、「マッチ売りの少女」や「パトラッシュ」の仲間。ただ存在の次元が違うんだ」
この穂村さんからいただいたコメントを敷衍するかたちでかんがえてみたのが「街角」です。
たとえばマッチ売りの少女や『フランダースの犬』のパトラッシュは街角で昇天していくイメージがあるんですが、街角はそういったロマンチックの昇華、都市の資本主義のシステムから排斥される者たちが昇華されてゆく場所とともに、「ティッシュ」が配られてゆく場所としても機能しているのが特徴ではないかとおもうんです。資本主義からはずれてしまったひとびとのための疎外された領域であると同時に、ティッシュ配りに象徴されるような、資本主義のシステムが手放さない場所、街角の片隅にまで資本主義のメカニズムをゆきわたらせようとする、そういった両義的な場所としての〈街角〉があるように思うんです。
街角は、都市から最終的に逃れ出る、昇天できる、ファイナル・エンドな場所でもあるのだけれど、しかしティッシュ配りの広告から都市のシステムがはじまるような、スタートとしての場所でもあるとおもうんです。
だから、穂村さんがいってくださったような「存在の次元」のひとびとが同席する場所、次元が異なるままにたたずむ場所が「街角」なのではないかと。
マッチ売りの少女やパトラッシュが物語をかかえながら、物語のためにみんなしんでいくかたわらで、「俺」はいきるために、物語のない「リアル」な世界で「ティッシュ配り」をしつづけなければならない。でも、もしこの世界に「リアル」があるならば、それは天使につれていかれるパトラッシュをまのあたりにしつつも、パチンコの広告の入ったティッシュ配りをしつづけることでもあるんじゃないかとおもうわけです。おそらく、リアルとはただリアルとして成立するわけではなくて、「それはそうなんだけれどもでもわたしは」といったような、〈関係的〉なものじゃないかとおもうのです。
(「第74回 短歌ください(お題:ティッシュ)」『ダ・ヴィンチ』2014年6月号掲載 穂村弘 選)
【自(分で)解(いてみる)-召されゆくパトラッシュのかたわらでティッシュを配りつつ-】
選者の穂村弘さんから次のコメントをいただきました。
「街角で「ティッシュ配りする俺」は、「マッチ売りの少女」や「パトラッシュ」の仲間。ただ存在の次元が違うんだ」
この穂村さんからいただいたコメントを敷衍するかたちでかんがえてみたのが「街角」です。
たとえばマッチ売りの少女や『フランダースの犬』のパトラッシュは街角で昇天していくイメージがあるんですが、街角はそういったロマンチックの昇華、都市の資本主義のシステムから排斥される者たちが昇華されてゆく場所とともに、「ティッシュ」が配られてゆく場所としても機能しているのが特徴ではないかとおもうんです。資本主義からはずれてしまったひとびとのための疎外された領域であると同時に、ティッシュ配りに象徴されるような、資本主義のシステムが手放さない場所、街角の片隅にまで資本主義のメカニズムをゆきわたらせようとする、そういった両義的な場所としての〈街角〉があるように思うんです。
街角は、都市から最終的に逃れ出る、昇天できる、ファイナル・エンドな場所でもあるのだけれど、しかしティッシュ配りの広告から都市のシステムがはじまるような、スタートとしての場所でもあるとおもうんです。
だから、穂村さんがいってくださったような「存在の次元」のひとびとが同席する場所、次元が異なるままにたたずむ場所が「街角」なのではないかと。
マッチ売りの少女やパトラッシュが物語をかかえながら、物語のためにみんなしんでいくかたわらで、「俺」はいきるために、物語のない「リアル」な世界で「ティッシュ配り」をしつづけなければならない。でも、もしこの世界に「リアル」があるならば、それは天使につれていかれるパトラッシュをまのあたりにしつつも、パチンコの広告の入ったティッシュ配りをしつづけることでもあるんじゃないかとおもうわけです。おそらく、リアルとはただリアルとして成立するわけではなくて、「それはそうなんだけれどもでもわたしは」といったような、〈関係的〉なものじゃないかとおもうのです。
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