【感想】なにゆゑかひとりで池を五周する人あり算数の入試問題に 大松達知
- 2014/11/09
- 04:46
なにゆゑかひとりで池を五周する人あり算数の入試問題に 大松達知
【恋する数学】
工藤吉生さんや川北天華さん、千葉聡さんなどの〈学校文化〉を詠んだ短歌の感想を書いたときもおもったんですが、学校文化をうたうときにそれをただの書かれた文字(エクリチュール)からいまここでわたしたちが背負わざるをえない身体性に還元されたときにそこに〈詩〉が発生するのではないかということがいえるのではないかとおもうんです。
ぎゃくにいえば、学校文化とは、〈身体性〉をいかに〈文字=記述〉によって抑圧していくか、というところにあるのではないかと。
その構造をビビッドに抜き出したところに、大松さんのこの歌のおもしろさがあるようにおもいます。
算数の文章題では、いろんなひとのいろんな奇態な行動を数字のために数字に抑圧されつつ遂行していくわけです。
そのとき解答者であるわたしたちもまた文字=数字の原理を遵守するために、それをふしぎとはおもわずに、むしろ文字に対して文字解答でこたえていく。
しかしそうした文章題に身体性を付与したときに、じゃあこの奇態な行動をとるひとたちはどういった生をいきようとしていたのか、そしてわたしたちはそれに対してどういった生のリアクションができるのかという潜在的な生の位相がうかびあがってきます。
この歌にも「算数の文章題」のように「ひとり」という数字があらわれていますが、これは数字に還元できるひとりではなく、あくまで〈実存的〉な、「池を五周」もしなければいけないほどの生の履歴をかかえた〈ひとり=孤り〉です。それは一人ではない。
だからこの〈孤り〉には文章題は「花子さん」や「太郎くん」と名前を与えていたかもしれないけど、歌においては〈人〉と注意深く固有名は避けられて記述されています。
なぜならその「なにゆゑか」はいつかどこかで「池を五周する」ことになるかもしれない〈このわたし〉にもいずれ問われるかもしれない実存的な問いかけになっているからです。
そうかんがえると、結句の定型の大幅な〈はみだし〉も、〈算数的〉に割り切れない生の余剰のようできょうみぶかいとおもいます。
わたしたちの生きざるをえないn周の生。
狂ほしいほどにアジアよ 村田森田安田山田が出席簿につづく 大松達知
【恋する数学】
工藤吉生さんや川北天華さん、千葉聡さんなどの〈学校文化〉を詠んだ短歌の感想を書いたときもおもったんですが、学校文化をうたうときにそれをただの書かれた文字(エクリチュール)からいまここでわたしたちが背負わざるをえない身体性に還元されたときにそこに〈詩〉が発生するのではないかということがいえるのではないかとおもうんです。
ぎゃくにいえば、学校文化とは、〈身体性〉をいかに〈文字=記述〉によって抑圧していくか、というところにあるのではないかと。
その構造をビビッドに抜き出したところに、大松さんのこの歌のおもしろさがあるようにおもいます。
算数の文章題では、いろんなひとのいろんな奇態な行動を数字のために数字に抑圧されつつ遂行していくわけです。
そのとき解答者であるわたしたちもまた文字=数字の原理を遵守するために、それをふしぎとはおもわずに、むしろ文字に対して文字解答でこたえていく。
しかしそうした文章題に身体性を付与したときに、じゃあこの奇態な行動をとるひとたちはどういった生をいきようとしていたのか、そしてわたしたちはそれに対してどういった生のリアクションができるのかという潜在的な生の位相がうかびあがってきます。
この歌にも「算数の文章題」のように「ひとり」という数字があらわれていますが、これは数字に還元できるひとりではなく、あくまで〈実存的〉な、「池を五周」もしなければいけないほどの生の履歴をかかえた〈ひとり=孤り〉です。それは一人ではない。
だからこの〈孤り〉には文章題は「花子さん」や「太郎くん」と名前を与えていたかもしれないけど、歌においては〈人〉と注意深く固有名は避けられて記述されています。
なぜならその「なにゆゑか」はいつかどこかで「池を五周する」ことになるかもしれない〈このわたし〉にもいずれ問われるかもしれない実存的な問いかけになっているからです。
そうかんがえると、結句の定型の大幅な〈はみだし〉も、〈算数的〉に割り切れない生の余剰のようできょうみぶかいとおもいます。
わたしたちの生きざるをえないn周の生。
狂ほしいほどにアジアよ 村田森田安田山田が出席簿につづく 大松達知
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