【感想】ボ、ボクはキ、キヨラカに外道 普川素床
- 2014/05/08
- 20:31
ボ、ボクはキ、キヨラカに外道 普川素床
『おかじょうき』2014年4月号
【読み手もともにつまずいてみる・たどりついてみる】
初めてみたときからすごく気になる句でずっとかんがえていました。
語り手が〈吃音〉してしまっているというとても特殊な川柳です。
575の定型になんとかおさめようとしてもまったくおさめられません。完全な破調です。
ただ、ここでかんがえてみたいのは、語り手が吃音で語っているならば、読み手も定型という流暢な語りの感覚を捨てて、ともに吃音をいだく読み手として読んでみなければならないのではないかということです。
語り手は、「ボ」でとつぜんでだしから語ることにつまずいてしまいます。そこでそのつぎの〈つまずき〉としての読点「、」を一音としてかんがえてみます。つまり、読み手もここで語り手といっしょにつまずいてみます。
すると、つまずきつつも、「ぼ、ぼくは」という五音としての〈つまずきの定型〉がきっちりとえられます。
つまり、語り手はつまずきながらも上五はいいきっているのです。
中七もみてみます。おなじく読点を一音としてよんでみると、「き、きよらかに」と七音になります。ここでも語り手はつまずきながらもなんとかたどりつきました。語り手はいいきることに成功しています。
ところが語り手のシーンが変わるのが、下五です。ここで「外道」とつまずきなく、自信をもって漢字変換までしたうえで発話できた語り手は、定型としての五音にたどりそこねます。「げどう」という三音で沈黙してしまうのです。もしくは語りが未遂/挫折してしまう。
すなわち、わたしはこの句というのは、語り手がつまずいてこそはじめてたどりつける語り、というのを、〈つまずきながらも・語りきった〉と〈つまずかずに・語りそこねた〉の双方からあらわしている句なのではないかとおもうのです。「外道」といいきってしまったときに、はじめて語り手は語り手自身から疎外されてしまいます。それは語り手にとっての「外」だったのです。
そういった定型としての形態が、語り手の性質(nature)とふかく関係しているところにこの句のすごさがあるのではないかとおもいます。
『おかじょうき』2014年4月号
【読み手もともにつまずいてみる・たどりついてみる】
初めてみたときからすごく気になる句でずっとかんがえていました。
語り手が〈吃音〉してしまっているというとても特殊な川柳です。
575の定型になんとかおさめようとしてもまったくおさめられません。完全な破調です。
ただ、ここでかんがえてみたいのは、語り手が吃音で語っているならば、読み手も定型という流暢な語りの感覚を捨てて、ともに吃音をいだく読み手として読んでみなければならないのではないかということです。
語り手は、「ボ」でとつぜんでだしから語ることにつまずいてしまいます。そこでそのつぎの〈つまずき〉としての読点「、」を一音としてかんがえてみます。つまり、読み手もここで語り手といっしょにつまずいてみます。
すると、つまずきつつも、「ぼ、ぼくは」という五音としての〈つまずきの定型〉がきっちりとえられます。
つまり、語り手はつまずきながらも上五はいいきっているのです。
中七もみてみます。おなじく読点を一音としてよんでみると、「き、きよらかに」と七音になります。ここでも語り手はつまずきながらもなんとかたどりつきました。語り手はいいきることに成功しています。
ところが語り手のシーンが変わるのが、下五です。ここで「外道」とつまずきなく、自信をもって漢字変換までしたうえで発話できた語り手は、定型としての五音にたどりそこねます。「げどう」という三音で沈黙してしまうのです。もしくは語りが未遂/挫折してしまう。
すなわち、わたしはこの句というのは、語り手がつまずいてこそはじめてたどりつける語り、というのを、〈つまずきながらも・語りきった〉と〈つまずかずに・語りそこねた〉の双方からあらわしている句なのではないかとおもうのです。「外道」といいきってしまったときに、はじめて語り手は語り手自身から疎外されてしまいます。それは語り手にとっての「外」だったのです。
そういった定型としての形態が、語り手の性質(nature)とふかく関係しているところにこの句のすごさがあるのではないかとおもいます。
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