【感想】休み時間短いからね最後までできないけれどそれでもいいの? 田丸まひる
- 2014/11/11
- 12:00
休み時間短いからね最後までできないけれどそれでもいいの? 田丸まひる
【短歌と密室】
この田丸さんの歌を読んだときにはっきりとひとつわかったんですが、短歌っていうのは〈密室〉だとおもうんです。
たとえばもしこの歌にエロティックななにかをよしんば感じることがあったとしてもそれはこのふたりがなにをしているかよりも、この出来事(していることはなんでもいい、トランプでも、ハンカチ落としでも、セクシャルな行為でもなんでもいいのですが)が定型によって〈密室化〉されているというその一点につきるのではないか。
そこにこの短歌の〈エロス〉があるようにおもうんです。
エロスとは、端的にいえば、隠されてあることです。
隠されてあるからこそ、それを開示しようとする求心力が働くエネルギーのようなものです(たしかロラン・バルトもエロスとはひだとひだの間、袖口のような部分にあるといっていました。かんたんにいえばそれは、チラリズムだと)。
定型が密室であるとはどういうことか。
それは、31音しかもたないために読み手には〈絶対的〉に文脈がわかりっこないというその〈絶対疎外性〉にあるとおもうんです。
「最後までできないけれどそれでもいいの?」と発話されたときに、この定型の密室にいるふたりには、最後まではできないけれど途中まではできるその行為がはっきりとわかっている。
でも、わたしたち読み手にはその行為がなんであるかはわかりません。
なぜならそれが定型だからです。
とつぜん始まり・とつぜん終わりロックされる密室。
だから大事なのは、この(少なくとも)ふたりが、なにをしているか、ではなくて、定型の密室でこのふたりにしかわからないことをしようとしている、ということなのではないかとおもうのです。
定型は密室の限りにおいてエロスである。
そういう命題をこの短歌はうちだしているようにおもうのです。
定型こそが、最後まで〈させない〉ものなのです。
それでもいいの? はい。
ドライブも久しぶりだね助手席のシートの位置も前と違うね 田丸まひる
【短歌と密室】
この田丸さんの歌を読んだときにはっきりとひとつわかったんですが、短歌っていうのは〈密室〉だとおもうんです。
たとえばもしこの歌にエロティックななにかをよしんば感じることがあったとしてもそれはこのふたりがなにをしているかよりも、この出来事(していることはなんでもいい、トランプでも、ハンカチ落としでも、セクシャルな行為でもなんでもいいのですが)が定型によって〈密室化〉されているというその一点につきるのではないか。
そこにこの短歌の〈エロス〉があるようにおもうんです。
エロスとは、端的にいえば、隠されてあることです。
隠されてあるからこそ、それを開示しようとする求心力が働くエネルギーのようなものです(たしかロラン・バルトもエロスとはひだとひだの間、袖口のような部分にあるといっていました。かんたんにいえばそれは、チラリズムだと)。
定型が密室であるとはどういうことか。
それは、31音しかもたないために読み手には〈絶対的〉に文脈がわかりっこないというその〈絶対疎外性〉にあるとおもうんです。
「最後までできないけれどそれでもいいの?」と発話されたときに、この定型の密室にいるふたりには、最後まではできないけれど途中まではできるその行為がはっきりとわかっている。
でも、わたしたち読み手にはその行為がなんであるかはわかりません。
なぜならそれが定型だからです。
とつぜん始まり・とつぜん終わりロックされる密室。
だから大事なのは、この(少なくとも)ふたりが、なにをしているか、ではなくて、定型の密室でこのふたりにしかわからないことをしようとしている、ということなのではないかとおもうのです。
定型は密室の限りにおいてエロスである。
そういう命題をこの短歌はうちだしているようにおもうのです。
定型こそが、最後まで〈させない〉ものなのです。
それでもいいの? はい。
ドライブも久しぶりだね助手席のシートの位置も前と違うね 田丸まひる
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