【短歌・連作】「ぶらり途中下車不可の旅」『かばん』2014年6月号
- 2014/11/14
- 06:00
「そうだ、京都行こう。」をゆめみる日常に牛丼などが横でつゆだく
高熱で主/副の俺が無意識の多重放送お送りしてる
塔のぼる一万段目あがるときふいにガス栓思い出す俺
図書室のまだひらかれぬ戯曲からひかりが漏れる生殖の雨季
ぼくよりもとなりにすわる思い出がきみのひだりにとてもくわしい
おしあてて、うけいれられて、あんしんし、わたしがいきる、指紋認証
線香のかおりがふいにたちこめる電車に乗って、季語不毛地帯
のりべんがきらきらしつつ離れてく銀河鉄道途中下車不可
柳本々々「ぶらり途中下車不可の旅」『かばん』2014年6月号
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本号にてとみいえひろこさん、桐谷麻ゆきさんから歌評をいただきました。ありがとうございました!
ひきだしにせせらぎの音 虹鱒がレンズを揺らすねむるめがねの 柳本々々
これは、ドラえもん?ひきだしからせせらぎの音と共にドラえもんがあらわれて、夢うつつののび太のめがねのレンズを揺らす、そんな、秘密の午後の日々。「ねむるめがねの」あたりのもったりとした雰囲気、浮き世を「せせらぎ」と捉えたところに惹かれました。 とみいえひろこ「二〇一四年四月号五首選」
音で気がついてひきだしをあけ、レンズの中に泳ぐ虹鱒を確認したのでしょうか。聴覚から視覚への移ろいが自然です。実際にはあり得ない光景ですが、淡々とした文体でファンタジックになりすぎず、説得力があります。四句目と結句を倒置し、結句をひらがな表記にしたことと、「の」で余韻を残したことにより、まどろんでいるような美しいイメージがうまれました。 桐谷麻ゆき「とりどりの季節をゆくように~かばん4月号鑑賞」
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聴きにいくみちゆきおちるもの多くうろたえながらかぜききぐさは とみいえひろこ
冷凍庫だいすき とびらなめらかに開ければ天国にないつめたさ 桐谷麻ゆき
駆け抜ける馬のかずかず現実の世界と同じ大きさの地図 西原天気
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本号表紙絵は、東直子さんの「キングペンギンの散歩(あじさい)」。
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