【感想】不細工な飛び方だったでも飛んだ ひとり静
- 2014/11/21
- 06:00
不細工な飛び方だったでも飛んだ ひとり静
【飛ぶための翼は持っていなかったけれどそれでも飛んだ】
第七回「ごんぎつねの郷」全国誌上川柳大会からの一句です(ひとり静さんも記事(「ごんぎつねの郷」)を書かれていて私の句も紹介していただきました。ありがとうございました!)。
ときどき、定型の節目に注意しているんですが(五/七/五)、この/の部分をどう〈飛ばす〉かにひとつの定型詩の跳躍力があるようにおもうんです。
たとえば、ひとり静さんのうえにあげた句は、「飛び方だった/でも飛んだ」と、この「た/で」で読み手はいっきに〈跳躍〉しないといけない。
ここで読み手が加速してほんとうにじぶんの〈飛び方〉でとばなければならないのは、「飛び方だった。でも飛んだ」と、句点が、一拍が、跳躍台がないからです。
飛ぶためのジャンピングボードとしての「。」が、補助輪がない。
でもこれは定型詩なので、それでも、飛ばなければならない。
今回のお題は、「鳥」だったんですが、それをかんがえると、ひとり静さんの句には、じゃあふだん定型詩の前で、読み手はどのように読むことで〈鳥〉になれるんだろう、ならなきゃならないんだろう、もしくはなることに失敗してしまうんだろうということをかんがえさせるところがあるようにおもうんです。
定型詩のまえで、ひとは、「でも飛んだ」を〈鳥〉になることを要請されつつも、〈鳥〉になりきれず、それでも〈定型〉の翼をもらいうけ、「不細工な飛び方」だとしてもなんとか飛ぼうとする。
この、「でも飛んだ」というのは、定型をまえにして、ひとがなんども抱きしめる「でも飛んだ」のようにもおもうんです。
定型には句読点という翼がないから。
ひとり静さんの句集タイトルが『海の鳥・空の魚』だったことをかんがえると、いっそう「でも飛んだ」の意味もひろがってくるとおもいます。
ちなみに、わたしの〈飛び方〉は〈こう〉でした。
クリックひとつで翼を手に入れようとするなんて、
──〈ずる〉してるかも、しれません。
クリックで一羽殖えます青い鳥 柳本々々
(「第七回「ごんぎつねの郷」全国誌上川柳大会」加藤ゆみ子・中山恵子 選・入選」『川柳きぬうら』2014年11・12月号)
*
仮定法過去が翼を持ちたがる 加藤ゆみ子
蜂鳥になってあなたへホバリング 〃
音を出す 紙を縛ると吉本隆明 中山恵子
兵隊さんのヘ ヘップバーンのヘ 〃
鳥がつつこうとするので秋は抽象的 中西素
アイロンは鳥のかたちに白いシャツ ひとり静
【飛ぶための翼は持っていなかったけれどそれでも飛んだ】
第七回「ごんぎつねの郷」全国誌上川柳大会からの一句です(ひとり静さんも記事(「ごんぎつねの郷」)を書かれていて私の句も紹介していただきました。ありがとうございました!)。
ときどき、定型の節目に注意しているんですが(五/七/五)、この/の部分をどう〈飛ばす〉かにひとつの定型詩の跳躍力があるようにおもうんです。
たとえば、ひとり静さんのうえにあげた句は、「飛び方だった/でも飛んだ」と、この「た/で」で読み手はいっきに〈跳躍〉しないといけない。
ここで読み手が加速してほんとうにじぶんの〈飛び方〉でとばなければならないのは、「飛び方だった。でも飛んだ」と、句点が、一拍が、跳躍台がないからです。
飛ぶためのジャンピングボードとしての「。」が、補助輪がない。
でもこれは定型詩なので、それでも、飛ばなければならない。
今回のお題は、「鳥」だったんですが、それをかんがえると、ひとり静さんの句には、じゃあふだん定型詩の前で、読み手はどのように読むことで〈鳥〉になれるんだろう、ならなきゃならないんだろう、もしくはなることに失敗してしまうんだろうということをかんがえさせるところがあるようにおもうんです。
定型詩のまえで、ひとは、「でも飛んだ」を〈鳥〉になることを要請されつつも、〈鳥〉になりきれず、それでも〈定型〉の翼をもらいうけ、「不細工な飛び方」だとしてもなんとか飛ぼうとする。
この、「でも飛んだ」というのは、定型をまえにして、ひとがなんども抱きしめる「でも飛んだ」のようにもおもうんです。
定型には句読点という翼がないから。
ひとり静さんの句集タイトルが『海の鳥・空の魚』だったことをかんがえると、いっそう「でも飛んだ」の意味もひろがってくるとおもいます。
ちなみに、わたしの〈飛び方〉は〈こう〉でした。
クリックひとつで翼を手に入れようとするなんて、
──〈ずる〉してるかも、しれません。
クリックで一羽殖えます青い鳥 柳本々々
(「第七回「ごんぎつねの郷」全国誌上川柳大会」加藤ゆみ子・中山恵子 選・入選」『川柳きぬうら』2014年11・12月号)
*
仮定法過去が翼を持ちたがる 加藤ゆみ子
蜂鳥になってあなたへホバリング 〃
音を出す 紙を縛ると吉本隆明 中山恵子
兵隊さんのヘ ヘップバーンのヘ 〃
鳥がつつこうとするので秋は抽象的 中西素
アイロンは鳥のかたちに白いシャツ ひとり静
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