【感想】ラブホテルの隣に葬儀場ができ明るいほうがひとのいる場所 虫武一俊
- 2014/05/08
- 22:55
ラブホテルの隣に葬儀場ができ明るいほうがひとのいる場所 虫武一俊
【明るさとしての脱構築-生の明るみ-】
この虫武さんの短歌を読んだときに、だれもがすぐに生と死の二項対立を構造化するとおもうんですね。ラブホテル/葬儀場というふうに。
でも、この二項対立をすぐさま解体し、幽霊のような対立しあえない二項対立にしてしまうのがこの虫武さんの短歌のおもしろいところだとおもうんです。
上の句では「ラブホテル/葬儀場」という隣り合った二項対立がかたちづくられているんですが、下の句では「明るいほうがひとのいる場所」と語られています。
この「明るいほうが」という第四句が構造にゆさぶりをかけるものだとおもうんです。「明るいほう」とすることで、明暗という場所の相対性をもちこむことができます。それは場所が確定されるわけではなくて、明暗によって変化する不確定の非場所をあらわす指示子ともなるはずです。
明暗は、照明の増減によっても比較されますが、あかるい/くらいは〈まぶしい〉などとはちがい、主観の明暗でもつかわれることばです。だからこれは「ラブホテル」や「葬儀場」そのものの明暗というよりもそれを前にしたひとの、そのひとの主観によって「ひとのいる場所」が関数的に変化していくうただとおもうんです。
そしてその主観によって「ひとのいる場所」が変わるということは、その主観によって生=ラブホテル/死=葬儀場といった二項対立も輻輳していくということではないかとおもうんです。
だからこの歌は、上の句で客観的な観察を置き、下の句で語り手がその客観的な観察によって成立する二項対立に語り手の主観からスクリュードライバーをかけて対立構造を複雑なかたちにねじこんでいく、そういううたではないかとおもうんですね。
語り手が「ラブホテル」にも「葬儀場」にもどちらにも位階をつけず、相対的明暗をほどこしつつも、そのつどの語り手の現在の生きている位置から生と死の「明るさ」をみずからの内面の〈明るさ〉にしたがって選んでいく。でもそれはいつだって反転するものとしてある。いきていくということはたぶんそういうことだから。「ラブホテル」にも「葬儀場」にもわたしの終着点をまだみいださず、相対的明るさをもっていきていかねばならないから。
そうした上の句と下の句の主観・客観構造が〈明るさ〉を軸にしてビビッドに照り輝いているうただとおもいます。
【明るさとしての脱構築-生の明るみ-】
この虫武さんの短歌を読んだときに、だれもがすぐに生と死の二項対立を構造化するとおもうんですね。ラブホテル/葬儀場というふうに。
でも、この二項対立をすぐさま解体し、幽霊のような対立しあえない二項対立にしてしまうのがこの虫武さんの短歌のおもしろいところだとおもうんです。
上の句では「ラブホテル/葬儀場」という隣り合った二項対立がかたちづくられているんですが、下の句では「明るいほうがひとのいる場所」と語られています。
この「明るいほうが」という第四句が構造にゆさぶりをかけるものだとおもうんです。「明るいほう」とすることで、明暗という場所の相対性をもちこむことができます。それは場所が確定されるわけではなくて、明暗によって変化する不確定の非場所をあらわす指示子ともなるはずです。
明暗は、照明の増減によっても比較されますが、あかるい/くらいは〈まぶしい〉などとはちがい、主観の明暗でもつかわれることばです。だからこれは「ラブホテル」や「葬儀場」そのものの明暗というよりもそれを前にしたひとの、そのひとの主観によって「ひとのいる場所」が関数的に変化していくうただとおもうんです。
そしてその主観によって「ひとのいる場所」が変わるということは、その主観によって生=ラブホテル/死=葬儀場といった二項対立も輻輳していくということではないかとおもうんです。
だからこの歌は、上の句で客観的な観察を置き、下の句で語り手がその客観的な観察によって成立する二項対立に語り手の主観からスクリュードライバーをかけて対立構造を複雑なかたちにねじこんでいく、そういううたではないかとおもうんですね。
語り手が「ラブホテル」にも「葬儀場」にもどちらにも位階をつけず、相対的明暗をほどこしつつも、そのつどの語り手の現在の生きている位置から生と死の「明るさ」をみずからの内面の〈明るさ〉にしたがって選んでいく。でもそれはいつだって反転するものとしてある。いきていくということはたぶんそういうことだから。「ラブホテル」にも「葬儀場」にもわたしの終着点をまだみいださず、相対的明るさをもっていきていかねばならないから。
そうした上の句と下の句の主観・客観構造が〈明るさ〉を軸にしてビビッドに照り輝いているうただとおもいます。
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