【感想】おつぱいに近づく眼鏡外しけり 山田露結
- 2014/11/27
- 12:00
おつぱいに近づく眼鏡外しけり 山田露結
【おっぱいと眼鏡をめぐる漸近と交錯】
眼鏡っていうのは決して〈視る〉ためのものではないんだ、っていうのがよくわかる句だとおもいます。
ここで「眼鏡」を「外し」たのは、おそらく〈内面〉がこれから露開することになるから、だとおもうんです。
眼鏡は〈内面〉の抑圧=防衛装置として、一方で、「おつぱい」は〈内面〉をひきずりだす装置として働いています。
柄谷行人が、〈風景〉はむしろ〈外〉をみない〈内側〉をみる人間によってつくりだされた、と指摘していましたが、ここでは眼鏡を外し〈外〉をみることをやめた人間が、「おつぱい」に内的〈風景〉を見いだしている。
そういうことになるのではないかとおもうんです。
眼鏡はそんなふうに、〈内面〉の武装解除としてあらわれます。
たとえば、勝井かな子さんのつぎのうた、
眼鏡を外しワープロ鎖してゆっくりとわれをぬぐなり それから眠る 勝井かな子
ここでは「眼鏡」と「われをぬぐなり」が響きあっています。露結さんとの句で対照させてみるならば、「おつぱい」と「眠る」が共鳴しあっているとおもいます。
眼鏡を外し〈内面〉が露開していく領域は内的風景の世界です。
眼鏡をはずしてひとははじめて〈みる〉風景がある。
これはマンガでも、そうです。
たとえば、井上雄彦『スラムダンク』の8巻で、「メガネくん」と桜木からメトニミカルに呼ばれる「木暮」が三井に殴られ、眼鏡がふきとびます。
しかしそのときはじめて「木暮」はみずからの〈内定風景〉を露開させます。
それはつまり、「メガネくん」と換喩=メトニミーで呼ばれていた「木暮」がメトニミーであることをやめ(つまり、自分がほかの何かと隣り合うことをやめ)、隠喩=メタファーとしてみずからをみずからに重ね、内面を吐露する瞬間です。
こんなふうに、眼鏡をかける者には、眼鏡と内面の問題がつきまといます。
〈内面〉=〈風景〉は、透明な言語である、言文一致によってもたらさましたが、眼鏡もまた、透明な言語であるはずです。
その眼鏡によって、どのように内面が分節されていくのか。
眼鏡をかけたままするキスと、眼鏡を外してするキスと、眼鏡をかけたままするセックスと、眼鏡を外してするセックスは、《どう》ちがうのか。
眼鏡問題は、「見えぬ眼」も含みこみながら、掛けてるものにも掛けてないものにも現れてくる問題として、つづきます。
見えぬ眼の方の眼鏡の玉も拭く 日野草城
【おっぱいと眼鏡をめぐる漸近と交錯】
眼鏡っていうのは決して〈視る〉ためのものではないんだ、っていうのがよくわかる句だとおもいます。
ここで「眼鏡」を「外し」たのは、おそらく〈内面〉がこれから露開することになるから、だとおもうんです。
眼鏡は〈内面〉の抑圧=防衛装置として、一方で、「おつぱい」は〈内面〉をひきずりだす装置として働いています。
柄谷行人が、〈風景〉はむしろ〈外〉をみない〈内側〉をみる人間によってつくりだされた、と指摘していましたが、ここでは眼鏡を外し〈外〉をみることをやめた人間が、「おつぱい」に内的〈風景〉を見いだしている。
そういうことになるのではないかとおもうんです。
眼鏡はそんなふうに、〈内面〉の武装解除としてあらわれます。
たとえば、勝井かな子さんのつぎのうた、
眼鏡を外しワープロ鎖してゆっくりとわれをぬぐなり それから眠る 勝井かな子
ここでは「眼鏡」と「われをぬぐなり」が響きあっています。露結さんとの句で対照させてみるならば、「おつぱい」と「眠る」が共鳴しあっているとおもいます。
眼鏡を外し〈内面〉が露開していく領域は内的風景の世界です。
眼鏡をはずしてひとははじめて〈みる〉風景がある。
これはマンガでも、そうです。
たとえば、井上雄彦『スラムダンク』の8巻で、「メガネくん」と桜木からメトニミカルに呼ばれる「木暮」が三井に殴られ、眼鏡がふきとびます。
しかしそのときはじめて「木暮」はみずからの〈内定風景〉を露開させます。
それはつまり、「メガネくん」と換喩=メトニミーで呼ばれていた「木暮」がメトニミーであることをやめ(つまり、自分がほかの何かと隣り合うことをやめ)、隠喩=メタファーとしてみずからをみずからに重ね、内面を吐露する瞬間です。
こんなふうに、眼鏡をかける者には、眼鏡と内面の問題がつきまといます。
〈内面〉=〈風景〉は、透明な言語である、言文一致によってもたらさましたが、眼鏡もまた、透明な言語であるはずです。
その眼鏡によって、どのように内面が分節されていくのか。
眼鏡をかけたままするキスと、眼鏡を外してするキスと、眼鏡をかけたままするセックスと、眼鏡を外してするセックスは、《どう》ちがうのか。
眼鏡問題は、「見えぬ眼」も含みこみながら、掛けてるものにも掛けてないものにも現れてくる問題として、つづきます。
見えぬ眼の方の眼鏡の玉も拭く 日野草城
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