【感想】つり橋はゴム製真ん中あたり跳びはねる 前田一石
- 2014/12/05
- 19:10
つり橋はゴム製真ん中あたり跳びはねる 前田一石
【定型をゴム化する】
『川柳カード7号』の前田一石さんの「アテレコは失敗」からの一句です。
この「アテレコは失敗」という連作は、映像にあとから声をあてて映像と声を同期させるアテレコが失敗するように、盤石な定型観が崩されていくのがひとつのポイントになっているようにおもいます。
たとえば掲句なんですが、そもそもが「ゴム製」の「つり橋」なので「つり橋」と「頑丈さ」の同期=アテレコが失敗しています。
でも、ここではそうした内容面だけでなく、ことば=定型としてのアテレコの失敗も起こっています。
だからこれは川柳だといわれたときに読み手はめいめいの定型観をゆらせながらも、なんとか定型的跳躍をこなしていかなければならない。
それがこの句なのではないかとおもうのです。
たとえばわたしなら、
つりばしはごむ/せいまんなかあ/たりとびはねる
というめちゃくちゃ不安定だけれどもなんとか定型的な七七七でとってみたりするのですが、意味の文節がことごとく跳びはねているように、こうした取り方がすぐにゴム製のつり橋をあるいているような不安定感にうつります。
だからわたしは「アテレコは失敗」という不定形さそのものが、定型に対する躍動的挑発なのではないかとおもうのです。
ここではただたんに挑発となるのではなく、アテレコ、跳びはねる、といったアクティブな、動態的な挑発であることが大事なようにもおもいます。
定型観をゴム製のつり橋化すること。
その不安定さのなかではこのような不安定な運動することの快楽が見いだせます。
下半身から砂になる石になる 前田一石
古井戸で孵化する真夏の交差点 〃
陽を浴びて臨界てのひらの長い坂 〃
ながらながらでペンを置くはめに 〃
森の樹をゆすると落ちてくる浮輪 〃
そしてこれらを不安定的に要約してみるならば、
液状化進むアテレコは失敗 前田一石
【定型をゴム化する】
『川柳カード7号』の前田一石さんの「アテレコは失敗」からの一句です。
この「アテレコは失敗」という連作は、映像にあとから声をあてて映像と声を同期させるアテレコが失敗するように、盤石な定型観が崩されていくのがひとつのポイントになっているようにおもいます。
たとえば掲句なんですが、そもそもが「ゴム製」の「つり橋」なので「つり橋」と「頑丈さ」の同期=アテレコが失敗しています。
でも、ここではそうした内容面だけでなく、ことば=定型としてのアテレコの失敗も起こっています。
だからこれは川柳だといわれたときに読み手はめいめいの定型観をゆらせながらも、なんとか定型的跳躍をこなしていかなければならない。
それがこの句なのではないかとおもうのです。
たとえばわたしなら、
つりばしはごむ/せいまんなかあ/たりとびはねる
というめちゃくちゃ不安定だけれどもなんとか定型的な七七七でとってみたりするのですが、意味の文節がことごとく跳びはねているように、こうした取り方がすぐにゴム製のつり橋をあるいているような不安定感にうつります。
だからわたしは「アテレコは失敗」という不定形さそのものが、定型に対する躍動的挑発なのではないかとおもうのです。
ここではただたんに挑発となるのではなく、アテレコ、跳びはねる、といったアクティブな、動態的な挑発であることが大事なようにもおもいます。
定型観をゴム製のつり橋化すること。
その不安定さのなかではこのような不安定な運動することの快楽が見いだせます。
下半身から砂になる石になる 前田一石
古井戸で孵化する真夏の交差点 〃
陽を浴びて臨界てのひらの長い坂 〃
ながらながらでペンを置くはめに 〃
森の樹をゆすると落ちてくる浮輪 〃
そしてこれらを不安定的に要約してみるならば、
液状化進むアテレコは失敗 前田一石
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