【感想】いもうとの世界はいつも工事中 石原ユキオ
- 2014/12/09
- 21:04
いもうとの世界はいつも工事中 石原ユキオ
【今日からできる世界征服入門】
掲句は『川柳カード7号』誌上大会の題「世界」からの一句です。
今回おもしろかったのが唯物論的な世界です。
世界を唯物的にとらえる。
このユキオさんの句がおもしろいのは、「いもうとの世界」は限りなく観念的なものであるかもしれないけれど、にもかかわらず「工事中」というのがそれをやはり限りなく唯物的なモノにしていくというところです。
かんがえてみれば「いもうと」という概念それ自体が、短詩の世界においても観念連合の深い〈世界〉としてあり、そうした〈妹の系譜〉をかんがえてみても、そこに「工事」としてわけいっていくことは興味ぶかいことでもあるし、もちろんたとえばサブカルチャーなどで妹が妹化されえず、どこまでも〈いもうと〉としてのアイコンとして工事中のままあるという側面から読んでみることもできるかもしれない。
あくまで観念として飛び立ちそうな妹概念をどこまでも「工事中」がとらえて離さない。
それがおもしろいとおもうのです。
たとえばほかに唯物論的世界といえば、露結さんの、
世界にも妻にも穴があいている 山田露結
世界と、妻が、等価であり、かつ、世界の穴と、妻の穴が、等価である世界。
このとき、逆に、そういった語り手の〈世界〉観が世界の穴としてあらわれてくる出来事性がこの句のひとつのおもしろさではないかとおもいます。
世界をセカイにうつしこむとき、逆に〈わたし〉の世界が〈穴〉として浮き彫りになってゆく。
世界から、妻から、〈わたし〉が相対化される瞬間です。
また倉間さんの、
指で押した箇所から腐りだす世界 倉間しおり
も、感触的=触感的な唯物世界がおもしろいとおもいました。
指で押した箇所から腐りだすということはそれはあくまで〈わたし〉から始まる世界でありながら、セカイ系として閉じられないようなどこまでも腐食がひろがってゆく世界。
その腐食に、〈わたし〉に閉じこめえない〈他者性〉があるようにもおもいます。
また、世界を唯物論的にとらえてきたものが、世界征服です。
悪いひとたちは、世界を唯物的にとらえ、なんとか手中におさめようとしてきました。ドロンボー一味も、あしゅら男爵も、ムスカことロムスカ・パロ・ウル・ラピュタも、ベルク・カッツェ自称次期総裁も。
それから世界征服を唯物的にとらえた次のような句も。
世界征服のカフスが鶏冠なり 中山奈々
【今日からできる世界征服入門】
掲句は『川柳カード7号』誌上大会の題「世界」からの一句です。
今回おもしろかったのが唯物論的な世界です。
世界を唯物的にとらえる。
このユキオさんの句がおもしろいのは、「いもうとの世界」は限りなく観念的なものであるかもしれないけれど、にもかかわらず「工事中」というのがそれをやはり限りなく唯物的なモノにしていくというところです。
かんがえてみれば「いもうと」という概念それ自体が、短詩の世界においても観念連合の深い〈世界〉としてあり、そうした〈妹の系譜〉をかんがえてみても、そこに「工事」としてわけいっていくことは興味ぶかいことでもあるし、もちろんたとえばサブカルチャーなどで妹が妹化されえず、どこまでも〈いもうと〉としてのアイコンとして工事中のままあるという側面から読んでみることもできるかもしれない。
あくまで観念として飛び立ちそうな妹概念をどこまでも「工事中」がとらえて離さない。
それがおもしろいとおもうのです。
たとえばほかに唯物論的世界といえば、露結さんの、
世界にも妻にも穴があいている 山田露結
世界と、妻が、等価であり、かつ、世界の穴と、妻の穴が、等価である世界。
このとき、逆に、そういった語り手の〈世界〉観が世界の穴としてあらわれてくる出来事性がこの句のひとつのおもしろさではないかとおもいます。
世界をセカイにうつしこむとき、逆に〈わたし〉の世界が〈穴〉として浮き彫りになってゆく。
世界から、妻から、〈わたし〉が相対化される瞬間です。
また倉間さんの、
指で押した箇所から腐りだす世界 倉間しおり
も、感触的=触感的な唯物世界がおもしろいとおもいました。
指で押した箇所から腐りだすということはそれはあくまで〈わたし〉から始まる世界でありながら、セカイ系として閉じられないようなどこまでも腐食がひろがってゆく世界。
その腐食に、〈わたし〉に閉じこめえない〈他者性〉があるようにもおもいます。
また、世界を唯物論的にとらえてきたものが、世界征服です。
悪いひとたちは、世界を唯物的にとらえ、なんとか手中におさめようとしてきました。ドロンボー一味も、あしゅら男爵も、ムスカことロムスカ・パロ・ウル・ラピュタも、ベルク・カッツェ自称次期総裁も。
それから世界征服を唯物的にとらえた次のような句も。
世界征服のカフスが鶏冠なり 中山奈々
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