【感想】早く透けたいねと月を浴びている 瀧村小奈生
- 2014/12/12
- 12:00
早く透けたいねと月を浴びている 瀧村小奈生
【速度と加速度】
『川柳カード7号』誌上大会・題「早い」の選者・東直子さんが特選にえらんだ瀧村さんの句です。
この瀧村さんの句でおもしろいなあとおもったのが、話し言葉を定型におさめることで分節化されたときの語り手の意識の〈屈光〉のようなものです。
たぶんこの句はくちにだしてよむときには、
はやくすけたいね/とつきを/あびている
というふうに、《はやくすけたいね》というまとまり、〈早さ〉への衝動から定型をくつがえしてよんでいくんじゃないかとおもうんです。
つまり、「はやくすけたいね」と大きな欲動がでてくることで、定型の速度を超え、じっさいに「早く」なる。
だから題詠としての「早い」だけでなく、ここには、定型よりもさらに加速度を増す語り手の「早さ」がある。
その意味で、この句は、「早い」。
けれどもこの句は、〈川柳〉なので定型がある。
定型にわけると、
はやくすけ/たいねとつきを/あびている
「はやくすけたいね」が、分割される。
わたしはここに語り手の〈ほんとうに透けてしまってもいいのかどうか〉どこか一抹のためらいを抱えた語り手のドラマをみます。
けれども、「早さ」はそれを許さない。
なにしろ、これは「早い」句なのです。
ドラマを演じているひまも、葛藤をしている時間も、ない。月の光ははやさをまして、濃厚にどんどんふりそそいでいる。
定型よりももっと速度をまして、句が早さをあげて、語り手を透過していく。
定型の加速度のさなかにあっては時間はもとにはもどらないから。
日めくりのどうすることもできぬまま ひとり静
(『川柳カード7号』題「早い」・東直子 選)
【速度と加速度】
『川柳カード7号』誌上大会・題「早い」の選者・東直子さんが特選にえらんだ瀧村さんの句です。
この瀧村さんの句でおもしろいなあとおもったのが、話し言葉を定型におさめることで分節化されたときの語り手の意識の〈屈光〉のようなものです。
たぶんこの句はくちにだしてよむときには、
はやくすけたいね/とつきを/あびている
というふうに、《はやくすけたいね》というまとまり、〈早さ〉への衝動から定型をくつがえしてよんでいくんじゃないかとおもうんです。
つまり、「はやくすけたいね」と大きな欲動がでてくることで、定型の速度を超え、じっさいに「早く」なる。
だから題詠としての「早い」だけでなく、ここには、定型よりもさらに加速度を増す語り手の「早さ」がある。
その意味で、この句は、「早い」。
けれどもこの句は、〈川柳〉なので定型がある。
定型にわけると、
はやくすけ/たいねとつきを/あびている
「はやくすけたいね」が、分割される。
わたしはここに語り手の〈ほんとうに透けてしまってもいいのかどうか〉どこか一抹のためらいを抱えた語り手のドラマをみます。
けれども、「早さ」はそれを許さない。
なにしろ、これは「早い」句なのです。
ドラマを演じているひまも、葛藤をしている時間も、ない。月の光ははやさをまして、濃厚にどんどんふりそそいでいる。
定型よりももっと速度をまして、句が早さをあげて、語り手を透過していく。
定型の加速度のさなかにあっては時間はもとにはもどらないから。
日めくりのどうすることもできぬまま ひとり静
(『川柳カード7号』題「早い」・東直子 選)
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