【短歌・連作】「ーブカ」『かばん』2014年12月号
- 2014/12/16
- 06:00
あんなにもやさしいきみがぶりぶりと魚を捌(さば)く背中の凹凸(おうとつ)
君の手も髪もことばもやさしさもたぶん(遺伝子組み換えでない)
よくみれば体育座りは複雑に折り畳まれたこころのようだ
漱石の『こゝろ』を貸したきみからの文字化けしてる手紙がとどレ广Y&ゥン
苗字など変わった君に電話してその凄まじさ、吹雪くモシモシ
ふっと、闇。センサーに向け↑→↓←(ばたばた)と人感を出す俺の全力
→神保町→中野ブロードウェイ→秋葉原→趣味が止まらぬ聖地巡礼
ーブしてはまぐろ赤身が回りつつきみのかたわらスルーでまたカ
「ーブカ」『かばん』2014年12月号
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【添え書きの花園】
さいきん、レ广Y&ゥンだけで手紙を書こうとしているのだが、なかなかうまくいかない。とりあえず、あなたに会いたい、くらいは言えるのだが、その後のことがレ广Y&ゥンだけでは構文上、有意味として構造化できないようなのだ。
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本号にて桐谷麻ゆきさんから歌評をいただきました。ニューウェーブのコラージュの観点からていねいに読み解いてくださいました。拝読し、わたし自身がとても勉強になりました。桐谷麻さん、ありがとうございました。
文通をさせろと脅す手紙魔は恋人の恋人の恋人 柳本々々
ニューウェーブ短歌の担い手3人をモチーフにしたチャレンジな連作です。本歌取りというよりも、特徴的なモチーフを切り取り、コラージュしたようなつくりで、読者に驚きと新鮮な感覚を与えます。掲出歌は元の歌と同じモチーフを用いながら、乗せているリズムがずらされています。そのため元の姿では混乱しそうなくらいだったリフレインも短めで、「手紙魔」の姿がはっきり見えてくるようです。 桐谷麻ゆき「たとえば、たとえば ~かばん10月号鑑賞~」
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平原の面影のこしその麦の宿命どおり焼けあがるパン 桐谷麻ゆき
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今月号の表紙絵は、東直子さんの「ベニヒワと稲」です。
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