【感想】回線はつながりました 夜空です なかはられいこ
- 2014/05/14
- 16:48
回線はつながりました 夜空です なかはられいこ
【銀河規模でお送りされた〈もしもし〉─助詞と夜空の位相から―】
なかはられいこさんの『句集 脱衣場のアリス』のなかの一句です。
この句の、助詞「は」にすこし注目してみたいとおもいます。助詞の「は」とは、話題を提示する助詞ともいわれているんですが、多くの事柄のなかからひとつだけ取り出す際に用いられるのが本来の用法です。
そういった本来の用法を思い返すならば、この「回線はつながりました」の箇所は他のXはいまだつながっていない、しかし「回線はつなが」ったというふうに読むこともできるのではないかとおもうんです。つまり、この「つながりました」の背景には多くの断絶が潜んでいるようにおもいます。しかし「回線はつなが」ったのです。この多の断絶と唯一の接続によって切断と接続のドラマがうたわれているのがとりあえずこの句が起因するひとつのドラマのようにおもいます。
しかしここからさらにドラマが起こっています。つながったのが「夜空」だということです。「夜空」が画面にうつしだされたのかもしれないし、あいてとつながることによって「夜空です」と発話をうけたのかもしれません。それはわかりません。
ここで大事なのは「回線がつなが」ったことにより、「つなが」ったことではじめてアクセスできたのが「夜空」だったということではないかとおもいます。「夜空」っていうのはかんがえてみるとすごくふしぎなことばです。たとえばいまとなりにいるひとに「ねえちょっと夜空をみあげてみて」とはいいません。となりのひととは「夜」を共有しているからです。その場合は「星をみて、月をみて」というとおもうんですね。だから「夜空」ということばが使われるときは「夜」が共有されていない場合に限られるのではないかとおもうんです。
つまりここで「つなが」った「回線」とはおそらく場所がどれだけ離れていても、言語を介して、場を共有できるような「夜空」としてのアクセス、ちがう場所にいるけれどことばを介したわたしとあなたのアクセスのようにおもうんです。
それを説明することなく瞬間的に、あたかもこの川柳があなたにアクセスするように描いてしまった、これはそういう速度をもった句なのではないかとおもいます。
【銀河規模でお送りされた〈もしもし〉─助詞と夜空の位相から―】
なかはられいこさんの『句集 脱衣場のアリス』のなかの一句です。
この句の、助詞「は」にすこし注目してみたいとおもいます。助詞の「は」とは、話題を提示する助詞ともいわれているんですが、多くの事柄のなかからひとつだけ取り出す際に用いられるのが本来の用法です。
そういった本来の用法を思い返すならば、この「回線はつながりました」の箇所は他のXはいまだつながっていない、しかし「回線はつなが」ったというふうに読むこともできるのではないかとおもうんです。つまり、この「つながりました」の背景には多くの断絶が潜んでいるようにおもいます。しかし「回線はつなが」ったのです。この多の断絶と唯一の接続によって切断と接続のドラマがうたわれているのがとりあえずこの句が起因するひとつのドラマのようにおもいます。
しかしここからさらにドラマが起こっています。つながったのが「夜空」だということです。「夜空」が画面にうつしだされたのかもしれないし、あいてとつながることによって「夜空です」と発話をうけたのかもしれません。それはわかりません。
ここで大事なのは「回線がつなが」ったことにより、「つなが」ったことではじめてアクセスできたのが「夜空」だったということではないかとおもいます。「夜空」っていうのはかんがえてみるとすごくふしぎなことばです。たとえばいまとなりにいるひとに「ねえちょっと夜空をみあげてみて」とはいいません。となりのひととは「夜」を共有しているからです。その場合は「星をみて、月をみて」というとおもうんですね。だから「夜空」ということばが使われるときは「夜」が共有されていない場合に限られるのではないかとおもうんです。
つまりここで「つなが」った「回線」とはおそらく場所がどれだけ離れていても、言語を介して、場を共有できるような「夜空」としてのアクセス、ちがう場所にいるけれどことばを介したわたしとあなたのアクセスのようにおもうんです。
それを説明することなく瞬間的に、あたかもこの川柳があなたにアクセスするように描いてしまった、これはそういう速度をもった句なのではないかとおもいます。
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