【川柳・連作】ぬるい崖(『かばん』2014年2月号)
- 2015/01/10
- 09:27
とむらいの猫たちがゆく言語域
間隙がビルにもあるわ生命体
きみが泣くベッドのわきがぬるい崖
肉のたば指示されている桜桃忌
くちびるを地図から拾う秋休み
こくみんがすやすや起きる大みそか
祖母がもつかごめかごめのいさぎよさ
最後から二番目だけが倒れてる
柳本々々『かばん』2014年2月号
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飯島章友さんから『かばん』の「かばんも五七五」において以下の句評をいただきました。「かばん」の編集人をされていた飯島さんからは毎月「前号寸評」を書いていただいていました。ありがとうございました!
くとうてん煮こんだよるにすこし浮く 柳本々々
社会性(≠時事)と詩的叙情性を感じさせる昭和革新川柳にも似た一連。くとうてん→煮る→浮くの潜在的因果関係が膝ポン川柳と一線を画す。 飯島章友『かばん』2013年12月号
倒れます動体視力さげすんで 柳本々々
加藤茶が志村にツッコミを入れる時わざと間を溜めたため「叩くなら早く叩け!」と逆ツッコミされることがあるが、その面白さに通じる。 飯島章友『かばん』2014年1月号
しばらくは右で死んでる観覧車 柳本々々
境涯句とも思えないし、意味を放擲したポストモダン句とも思えない。いわば言葉の存在感で迫ってくる句で、川柳の可能性はこのあたりか。 飯島章友『かばん』2014年2月号
くちびるを地図から拾う秋休み 柳本々々
雨の降る解答欄でおもいだす 〃
一句目は秋の童謡が発想の起点かも知れず、ポピュラリティーを感じさせる。二句目、「雨の降る解答欄」は見立てとも、言葉と言葉を取合わせて化学変化を狙ったとも。抽象的な叙情句は私もよく作るが、句会での打率は低くなるので御覚悟を。意味へ帰着せずにしみてくる句。 飯島章友『かばん』2014年3月号
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脱ぎ終えて世界に幕をひく百足 飯島章友
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