【感想】乳って、なんですか-乳をめぐる冒険-
- 2015/01/26
- 21:20
乳房には乳房の主張あって火に 奈良一艘
何が見えた胸にあるドラえもんの鈴 おおせ香
彼の乳首からカブトガニのにおい 月波与生
病むときも乳房は東向くように 德田ひろ子
【乳に、であう。】
一帆さんが主催されている柳誌『いちほの川柳ブログ句会 はじめの一歩』から、〈乳〉をめぐる句を抜き出してみた。
ときどき、乳についてかんがえている。
乳って、なんですか、と。
わたしが胸にてをあててじぶんに聞いてもしかたがないので、乳のことを、川柳に聞いてみようと思ったのである。どうなのか、と。
たとえば、一艘さんや与生さんの乳の句。
ここでは、乳が自律的な主体性をもち、乳の所有者とは、べつの〈働き〉を起こしはじめている。
乳房が主張したり、乳首からカブトガニのにおいを発したりする。
つまり、ここでは、〈わたし〉に対するもうひとつの主体として〈乳〉が起動=機動している。
非日常的な乳でもあるが、セクシュアリティをめぐる乳のことをかんがえてみれば、乳は言説としては日常的にも自律している存在である。
たとえば、公で〈おっぱい〉というとき、わたしたちは羞恥心をかんじるかもしれない。それは、〈おっぱい〉をめぐることばのネットワークが〈わたし〉とはべつに自律しているからだ。
胸は、ある自律の表徴として、機能する。
乳とはそういうものです、と、乳の句が、わたしに答える。
また、おおせさんやひろ子さんの乳の句。
乳が〈場所性〉ともかかわってくる。
胸はドラえもんの鈴がある場所だし、わたしがどういう位置性をいまとっているかという場所性を示唆するものでもある。
乳が方角をとるとき、わたしは、乳によって、わたしの身体のベクトルを、乳から教育されつつ、学ぶことにも、なる。
心臓が止まった夜のピーピーケトル 月波与生
もちろん、乳が大事なのは、そこが、生と死をつかさどっているからでもある。
授乳するのも乳であれば、心臓と重なり合うのもまた、乳だからだ。
その意味では、乳は、多重的な記号論が、つねに、交錯する場所だといってもいいのではないだろうか。
乳は、わたしにそういって、その場を、去ってゆく。
わたしは、また、それでも、ときどき、乳のことをかんがえるんだろうとも、おもう。
乳は、音韻で、〈父(ti-ti)〉にもつながっていく。
〈父〉はいつでも、意味をつかさどっている。
出番までゆっくり眠るブラの中 一帆
何が見えた胸にあるドラえもんの鈴 おおせ香
彼の乳首からカブトガニのにおい 月波与生
病むときも乳房は東向くように 德田ひろ子
【乳に、であう。】
一帆さんが主催されている柳誌『いちほの川柳ブログ句会 はじめの一歩』から、〈乳〉をめぐる句を抜き出してみた。
ときどき、乳についてかんがえている。
乳って、なんですか、と。
わたしが胸にてをあててじぶんに聞いてもしかたがないので、乳のことを、川柳に聞いてみようと思ったのである。どうなのか、と。
たとえば、一艘さんや与生さんの乳の句。
ここでは、乳が自律的な主体性をもち、乳の所有者とは、べつの〈働き〉を起こしはじめている。
乳房が主張したり、乳首からカブトガニのにおいを発したりする。
つまり、ここでは、〈わたし〉に対するもうひとつの主体として〈乳〉が起動=機動している。
非日常的な乳でもあるが、セクシュアリティをめぐる乳のことをかんがえてみれば、乳は言説としては日常的にも自律している存在である。
たとえば、公で〈おっぱい〉というとき、わたしたちは羞恥心をかんじるかもしれない。それは、〈おっぱい〉をめぐることばのネットワークが〈わたし〉とはべつに自律しているからだ。
胸は、ある自律の表徴として、機能する。
乳とはそういうものです、と、乳の句が、わたしに答える。
また、おおせさんやひろ子さんの乳の句。
乳が〈場所性〉ともかかわってくる。
胸はドラえもんの鈴がある場所だし、わたしがどういう位置性をいまとっているかという場所性を示唆するものでもある。
乳が方角をとるとき、わたしは、乳によって、わたしの身体のベクトルを、乳から教育されつつ、学ぶことにも、なる。
心臓が止まった夜のピーピーケトル 月波与生
もちろん、乳が大事なのは、そこが、生と死をつかさどっているからでもある。
授乳するのも乳であれば、心臓と重なり合うのもまた、乳だからだ。
その意味では、乳は、多重的な記号論が、つねに、交錯する場所だといってもいいのではないだろうか。
乳は、わたしにそういって、その場を、去ってゆく。
わたしは、また、それでも、ときどき、乳のことをかんがえるんだろうとも、おもう。
乳は、音韻で、〈父(ti-ti)〉にもつながっていく。
〈父〉はいつでも、意味をつかさどっている。
出番までゆっくり眠るブラの中 一帆
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